【六車恭子 20170825】【公開用】
●「ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト」ニール・シュービン著、ハヤカワ文庫
人体を知るためにの最良の手引きが、他の動物の体のなかにひそんでいる!とし、動物の体のつくり(ボディプラン)の発展を人体の構造と結びつけて論じており衝撃が走った。
ヒトと魚の間に横たわる深いつながりを陸に上がった最初の魚類に近い仲間の化石を探す旅が始まる。足かけ6年をかけて、ティクタ一リク発見の調査探検の成果がこの本で語られている。すべての動物の骨格に基本的なデザインがある!ことから、人類進化の道筋をもたどれるとし、ダ一ウィンの進化論をかきかえるほどの熱と力がある。
体を獲得し、ついで目を、そして臭いを感知できた痕跡を骨のデザインから見極めて得心させる手際は鮮やか!久々に興奮覚めやらず。
お薦め度:★★★★ 対象:人類進化の神秘に触れてみたい人
【和田岳 20171020】【公開用】
●「ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト」ニール・シュービン著、ハヤカワ文庫
著者は化石を発掘する古生物学者でありながら、発生学や分子遺伝学的な研究にも手を染める総合的な進化生物学者。近年盛んな進化発生生物学(エヴォデヴォ)の一端を紹介する一冊という色合いが強い。
著者の化石探し体験から話は始まり、魚類と四足動物をつなぐティクターリクの発見へつながっていく。第2章は形態学的に魚の鰭にヒトの手の起源を探す。第3章は、手の構造を発生させる遺伝子の話。とまあ、今のヒトの形の起源を、魚にまでたどることができるという話が、毛、頭、鼻、眼、耳について繰り返される。その合間にさらに遡っての、ボディプランや多細胞生物の起源にまで話は及ぶ。
形態に残る進化の道筋という定番のテーマに、エヴォデヴォな成果を混ぜて紹介してくれる。第1章の化石発掘の話が一番面白かった。
お薦め度:★★ 対象:エヴォデヴォに興味のある人、あるいは現生生物の発生過程の研究から生物進化についての理解が進むのを知らない人
【森住奈穂 20170824】
●「ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト」ニール・シュービン著、ハヤカワ文庫
先日、コウモリ観察会に参加した折のこと、「コウモリは逆さにぶら下がって頭に血が上らないんですか」という質問に、「じゃあ人間は二足歩行で脚がむくまないんですか」と質問を返されたことを思い出す。たしかに二足歩行が当たり前だと思いがちだけど、ほかの生き物たちの基本は四足歩行。魚類も腹は下に向いている。これじゃあ腰に負担がかかるはずだよ。昨夏、初めてギックリ腰になったことを思い出す。本書には、生き物それぞれが持つ器官、形質は、それ以前の段階にあったものをやりくりして形作られたものであることが紹介されている。つまり、私たちの体のあらゆる部分は再利用品なのだ。著者は古生物学者にして解剖学者。化石研究と遺伝子研究を合体し、動物の体の進化を、人体の構造と結び付けて語っている。それにしても、35億年の生命進化の歴史を明らかにできる遺伝子研究って、すごいなぁ。
お薦め度:★★★ 対象:何かを得れば何かを失う?進化について考えてみたいひと