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本の紹介「ヒトの社会の起源は動物たちが知っている」

「ヒトの社会の起源は動物たちが知っている 「利他心」の進化論」エドワード・O・ウィルソン著、NHK出版、2020年7月、ISBN978-4-14-081825-1、1400円+税

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【萩野哲 20201014】
●「ヒトの社会の起源は動物たちが知っている」岡西政典著、中公新書

 著者は、進化の主要な段階を@生命の発生、A真核細胞の登場、B有性生殖の登場、C多細胞生物の誕生、D社会の発生、およびE言語の発生と位置付けた。生物が進化の段階を踏破するにはそれぞれ集団のために個体を犠牲にするジレンマ、著者が例えて言う「ドラゴンチャレンジ」が必要であったと言う。その中で、Dのクライマックスが真社会性であり、本書の副題にもなっている「利他心」が最高レベルに達する。著者は真社会性の生物にシロアリやアリとともにヒトをも加えている。真社会性や集団選択を著者はどうとらえているか、アッサリと書かれている短い文章を深く考える必要があろう。

 お薦め度:★★★  対象:ウィルソンの考えを要約して知りたい人
【和田岳 20201028】
●「ヒトの社会の起源は動物たちが知っている」岡西政典著、中公新書

 著者は、アリ研究の大御所であり、『社会生物学』『人間の本性について』において、行動生態学の理論をヒトに当てはめて大論争を巻き起こした有名人。
 ヒトや生きものの進化を振り返った上で、利他行動とその先にある社会性(とくに真社会性)がどのように進化したのかについて、ウィルソンの個人的見解を展開してみせてくれる。
 利他行動の進化に血縁選択(及び包括適応度)は関係ないとか、ヒトは真社会性の動物だといった主張が繰り返される。が、この本に書かれているほど指示されている主張ではないので注意しましょう。

 お薦め度:★  対象:真社会性や血縁選択の意味を知っていて、ウィルソンはそれをどう考えているのか知りたい人
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