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本の紹介「ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること」
「ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること」ロブ・ダン著、白揚社、2023年2月、ISBN978-4-8269-0245-8、2800円+税
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【和田岳 20230428】【公開用】
●「ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること」ロブ・ダン著、白揚社
生態学や多様性科学をある程度学んだ者には、法則以前に当たり前なことを、わざわざ生物界の法則(the Laws of Biology)と呼び、それをベースに、ヒトやその周りの自然の未来を考えてみると、これから何を考えるべきかが見えてくる。といった一冊。
・地球温暖化は、環境変動に対応できる生物とできない生物を振り分け、そこにはヒトも含まれる。
・生態系、農作物、人体などさまざまなシステムの安定には多様性が重要。ヒトはいまだにそれを技術で補えないので、現在ある生体系サービスを守る必要がある。
内容盛り沢山で要約は難しいけど、とくに印象的だったのはこの2点。地球温暖化がヒトに及ぼす影響は勉強になる。ヒトのニッチという話は初めて見た。意外と脆弱。ヒトやツメバケイの腸内細菌の話は楽しい。
お薦め度:★★★ 対象:ヒトの未来、自然の未来が気になる人
【萩野哲 20230411】
●「ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること」ロブ・ダン著、白揚社
生物界には様々な法則がある。自然選択の法則、アーウィンの法則、種数-面積の法則などなど。これらの法則に対して、人間の行動傾向は適用範囲が狭く、かつ整合性に欠けるきらいがある。このため、人間がテクノロジーを過信して周囲の世界を変え始めると図らずして昔ながらの処方箋がうまく機能しない事例が増えていった。もっと謙虚になりなさい、つまり、生物の諸法則に逆らうのではなく手を組んでいくこと=島状の生息地を保全管理して人類にとって有益な種の進化を促し、コリドーを確保して野生生物が生存可能な場所に移動できるようにし、人類が現在依存し、更に将来依存するかもしれない生物種や生態系を守っていく方法を見つけることができれば、人類はより長く生存することができると著者は訴える。まあ、人類が絶滅しても自然界は終焉を迎えたりしないとも。1万年前に人類がマラリアを回避していたとは知らなかった。
お薦め度:★★★ 対象:人間よ。おまんは何がしたいがじゃ?と思う人
【西本由佳 20230423】
●「ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること」ロブ・ダン著、白揚社
種数-面積関係、コリドー、敵からのエスケープ、ニッチ、本能ではなく発明する知能、など生物界の「法則」と言えるものについて紹介される。自然は多様性があるほうが強靭であり、その生態系サービスは経済的に見てもとても価値がある。そしてヒトの行動によって失われた部分を補うためにテクノロジーを駆使しようとしても、ヒトが工学的に用意したそれは足りないものが多い。自然についてわかっていないことが多すぎるのだ。ヒトには自然が必要だが、自然には必ずしもヒトは必要でない。「人間中心視点」から脱却することが必要だ。環境決定論ってかなりセンシティブな話だと思っていたけど、こんなに無邪気に話題にできるものなんですね。
お薦め度:★★★ 対象:ヒトと人間の言い方の違いがなんとなくは分かる人
【森住奈穂 20230427】
●「ヒトという種の未来について生物界の法則が教えてくれること」ロブ・ダン著、白揚社
生物界のさまざまな法則は、近年の技術進歩によってより精巧で洗練されたものになってきた。それらを紹介しながら導き出される自然界の未来の姿を、ロブ・ダンならではの軽妙な筆致で描く。最初に述べられるのは人間中心視点の法則。
目的のために自然を単純化しようとしがち。生物界は動物や植物などの目に見えるものばかりと思ってしまいがち。まずここに気づかないと先には進めないよ、と。これは過去の著作でも繰り返し語られる、ロブ・ダンのテーマみたいなものか。
動物の、種としての平均寿命はおよそ200万年とのこと。これから180万年なんて、いったい全体どうなっているのやら。とても生き永らえられない気がするが、果たして現在が転換期となり得るのだろうか。
お薦め度:★★★ 対象:未来を心配しているひと
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