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本の紹介「人と森の物語」

「人と森の物語 日本人と都市林」池内紀著、集英社新書、2011年7月、ISBN978-4-86064-328-7、740円+税


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【六車恭子 20130222】【公開用】
●「人と森の物語」池内紀著、集英社新書

 巻末に著者による「緑の日本地図」が添えられている。人がつくり、手入れしてきたユニークな森が北海道から沖縄まで列島を縦断した記録である。人が長い年月、森と行き来し重ねた文化的遺産のカタログである。英断を持った人がその森の窮地を救い、今につなげた豊かな恵みの森の物語といえそうだ。生活の中から掬い上げ、ほんの少し英断を持った人の機転で守られた物語・・・。
 曲がった木を巧みに梁に組み込む「梁賛段」の技法を確立した気仙沼の大工の気風は3.11の震災でも奇跡をかいまみせた。押し寄せる津波に流されながらも家屋は別の地点で見いだされたと言う。北杜夫の母校旧制松本高校のキャンバス跡地にそびえるヒマラヤ杉の並木の植樹は、樹木が放つフィトンチッドの効力を知る二代目校長の英断のよるもの。埼玉県深谷にある「王国の森」はかって渋沢栄一に寄って着手され、放置された跡地を蘇らせた土地と人の新たな出会いの賜物だったでしょう。人によって280年もの間掘り起こされた別子銅山の地をふたたび「山を元に返す」判断をした時の支配人の決意…、その土地と人の奇跡の出会いから生まれた物語がここにある。

 お薦め度:★★★★  対象:森を知るもうひとつの指針を求める人

【萩野哲 20130424】
●「人と森の物語」池内紀著、集英社新書

 地図帳の色分けと現実の色とは異なっていることが多い。特に緑に塗られた都市近郊はそうである。しかし、かつての日本ではそうではなかった。緑を生かすも殺すも人の活動にかかっている。著者は、今も緑をたくわえている15箇所の森を題材に、その由来と人々との関わりを語っている。

 お薦め度:★★★  対象:人と森の関わり合いに興味がある人

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