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本の紹介「人類の足跡10万年全史」

「人類の足跡10万年全史」スティーヴン・オッペンハイマー著、草思社、2007年9月、ISBN978-4-7942-1625-0、2400円+税


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【加納康嗣 20080423】
●「人類の足跡10万年全史」スティーヴン・オッペンハイマー著、草思社

 ミトコンドリアDNAとY染色体に基づき人類の系統樹をたどる。遺伝子の証拠を考古学、人類学、気候学、言語系統学の最新の成果を借りて読み解き、壮大な人類史の流れを語っている。つい数10年前には考えられなかった科学の発展である。
 現生人類がアフリカで生まれ、出アフリカを7万4000年前、「南ルート(エリトリア→紅海→イエメン→湾岸)、一回限り」とし、アフリカ外におけるすべての分散の源は南アジア、特にインド、パキスタン、湾岸であったとする。海岸採集民は海岸伝いにいち早く展開し、7万4000年前にはマレー半島、6万5000年前にはオーストラリアに到達し、その流れは日本にも及んでいる。
 ヨーロッパへの植民、モンゴロイドの分化(進化)。ポリネシア植民は従来考えられていた台湾からではなく東南アジアからだったこと。アメリカ植民の時期と3つの流れなど等、興味は尽きない。
 ヨーロッパの学者が固執するコーカソイドの進化性、優秀性の信仰が見事に論破されていく。多地域進化説の呪縛、北京原人の末裔かと忸怩たる思いに苦しめられたモノとして痛快きわまりない。
 遺伝子の呼称が錯綜し、時に混乱し、途中集中力を失うことがあるとしても、人類史の新しいまとめとしてはすばらしい。

 お薦め度:★★★  対象:自らの出自に関心のある人は必読

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