友の会読書サークルBooks

本の紹介「人類進化の700万年」

「人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」」三井誠著、講談社現代新書、2005年9月、ISBN4-06-149805-3、760円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【中条武司 20060619】【公開用】
●「人類進化の700万年」三井誠著、講談社現代新書

 人類の進化を取り扱う学問というのは、一つの化石がすべてを塗り替え、思想が内容を左右し、内容によっては民族意識やナショナリズムを刺激する、おそらく非常に敷居が高いものだと思う。そのため、私たちに素人に提供される学説は、かなり古かったり、無難な所であったり、大事だけど関わりたくない分野である。
 著者は科学ライター(新聞記者)という立場を大いに生かして、人類進化に関わる最新の成果を、わかりやすく丁寧に解説してくれている。論文からあたって取材をし、仮説や反証を十分に解説し、かつわかりやすく伝える文章力は舌を巻く。追記で時間的に盛り込めなかった最新の内容までフォローするというこだわりよう。2006年段階の人類進化の最新成果が詰まっています。

 お薦め度:★★★★  対象:高校生以上、多くのヒトに。

【六車恭子 20060622】
●「人類進化の700万年」三井誠著、講談社現代新書

 人類進化の700万年を解りやすく印象的なフレーズに集約して纏めた解説書だ。私たちはとかく恐竜絶滅にロマンを求めて憂えていたが、むしろあの大量絶滅が次なる進化を促した。巨大隕石は人類の生みの親!、納得することしかり。
 二足歩行と歯の変化から始まり、石器を獲得するという技術革命を経て、火を用い狩りを覚え、定住し放牧する・・・。20万年前、アフリカ奥地で誕生した「ミトコンドリア・イブ」から派生した人類の緩やかな歩みを検証していく。発語因子獲得が原生人類誕生のとき、というのも刺激的だ。
 「正しく知ることが心の扉を開く鍵になる」フィリップ・トパイアス博士からのメッセージは総ての道に通じているようだ。

 お薦め度:★★★  対象:教科書を開く前に読んでおけば効果的

【和田岳 20060420】
●「人類進化の700万年」三井誠著、講談社現代新書

 現時点で最古の人類と考えられている700万年前のサヘラントロプス・チャデンシスから、現生のホモ・サピエンスまで。ヒトの進化の歴史を、最新の情報を盛り込んで紹介した本。著者はいわゆるサイエンス・ライターだが、研究者に取材するのみならず、自ら学術雑誌にまで目を通して、最新の情報を提供している。
 直立二足歩行や言語、脳の巨大化などが生じたのはいつ、どんな状況でか? 日本にヒトがすむようになったのはいつかなど、古くから多くの関心を集めてきた問題は、いろんな説が入り乱れてわかりにくい。それを、比較的わかりやすく説明してくれ、バランスのとれた記述には好感が持てる。
 化石に基づく話だけでなく、年代推定の方法の解説、DNAに基づく人類の起源と歴史の研究も紹介され盛りだくさん。

 お薦め度:★★★  対象:人類進化の研究の2005年夏時点最新の状況を知りたければ

[トップページ][本の紹介][会合の記録]