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本の紹介「人類を熱狂させた鳥たち」
「人類を熱狂させた鳥たち 食欲・収集欲・探究欲の1万2000年」ティム・バークヘッド著、築地書館、2023年3月、ISBN978-4-8067-1647-1、3200円+税
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【萩野哲 20230918】【公開用】
●「人類を熱狂させた鳥たち」ティム・バークヘッド著、築地書館
本書は鳥と人との関わりあいを、ほぼ時代順にまとめている。新石器時代の洞窟画、古代エジプトのトキのミイラ、古代ギリシャ・ローマの科学的黎明、中世の鷹狩りなど、人類は時代や地域で目的こそ違えど長く鳥類と付き合ってきた。ルネサンスの科学革命、17世紀イギリス発の記載分類、19世紀ダーウィンに種分化を確信させたフィンチ、20世紀オスカー・ハインロートらが始めた行動研究などによって鳥類への理解は深まった。しかし、それらと並行した植民地や海鳥繁殖地での鳥類の殺戮、科学発展のためと正当化されたコレクション欲などで多くの鳥類に危機が迫った。バードウォッチングや保護活動の発展にもかかわらず、交通網の発展による人類の移動と増加、気候変動が危機に拍車をかけている。人は鳥、更には自然とどうしたらうまく付き合えるのだろうか?
お薦め度:★★★ 対象:人と鳥の歴史を俯瞰したい人
【西本由佳 20231023】
●「人類を熱狂させた鳥たち」ティム・バークヘッド著、築地書館
人類は有史以前から、様々な方法で鳥たちに接してきた。食糧、狩りの獲物、鷹狩り、コレクション、羽、ペット、研究、バードウォッチングなど。その過程で絶滅した鳥も多い。本書は鳥の研究者が、歴史的、文化的そして科学的に鳥たちがどう扱われてきたかを教えてくれる。洞窟の壁画はほぼシルエットだけなのに現代の人が識別できるだけの特徴をとらえているとか、初期の鳥の図鑑がどう製作されたかなど、興味深い話がつらつらと列記される。今は鳥と人類のいちばん平和的なつきあいができている時代なのかもしれない(家禽はともかく)。
お薦め度:★★★ 対象:鳥を人の文化的な側面から知りたい人
【森住奈穂 20231026】
●「人類を熱狂させた鳥たち」ティム・バークヘッド著、築地書館
「食欲・収集欲・探究欲の1万2000年」と副題にある通り、鳥と人との関わり方の変遷を追う。長い間食糧として認識されていた鳥。やがて富裕層のコレクションの対象となり、当然珍しいほど収集家に狙われることになる。殺戮の時代を経て、現代は鳥への共感の時代。例え研究のためでも希少種を殺すことには反対の声が上がる。「共感は、少なくともある方面にとっては、十分な資源があってこそ生まれる贅沢である」と著者は言う。もし黙示録的な世界が訪れたら、一瞬にして崩れ去ってしまうとも。これからも鳥を眺めたり、味わったりできる関係が途切れませんように。
お薦め度:★★★ 対象:鳥好き(時代によって意味が変わります)なひと
【和田岳 20240227】
●「人類を熱狂させた鳥たち」ティム・バークヘッド著、築地書館
新石器時代の洞窟の鳥の壁画に始まり、現在に至るまで、イギリスあるいは西欧周辺を中心に人と鳥の関わりを紹介する。原題「Birds and Us」。科学的要素もあるけど、どちらかといえば歴史の話。
古い時代には、伝説と事実がごちゃ混ぜになっていたのが、ルネッサンスの時代に事実に基づく鳥の記述の努力が始まる。鳥を殺して調べるのが当たり前の19世紀。鳥を殺しまくる理由には科学の発展があげられ、博物館もそれを後押しした歴史がある。鳥を殺さずに観察しての研究がはじまった20世紀。バードウォッチングも鳥類標識調査も鳥類保護も、ほぼイギリスが発祥で、それはようやく20世紀になってからというのは意外だった。
お薦め度:★★★ 対象:ヨーロッパ中心の人と鳥の関わりの歴史を知りたい人
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