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本の紹介「じつは身近なホタルのはなし」
「じつば身近なホタルのはなし」遊磨正秀著、緑書房、2025年4月、ISBN978-4-86811-024-8、2200円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
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【和田岳 20250626】【公開用】
●「じつは身近なホタルのはなし」遊磨正秀著、緑書房
京都大学から龍谷大学、京都市から滋賀県で、50年以上にわたってゲンジボタルを調べてきた著者が、おもに自身のデータに基づきその生態を紹介し、人との共存について語った一冊。
卵の孵化、幼虫の食性、大きさと脱皮回数、生息場所。蛹化場所。成虫の活動時間、産卵場所選択、産卵数。とてもいろいろ調べていて、そのデータを元にゲンジボタルの一生が語られる。
ゲンジボタルは綺麗な河川に生息するのではなく、人の生活のすぐ近くの少し汚れた河川に生息することが、繰り返し述べられる。それだけに街灯の影響を受け、護岸工事の影響が問題になる。ゲンジボタルと人の暮らしの共存はなかなかに難しそう。それ以上に、ヘイケボタルの方が絶滅の恐れが高いのに、あまり研究されてないらしい。誰か研究しないのかな。
お薦め度:★★★ 対象:ゲンジボタルのいろいろを知りたい人
【里井敬 20250627】
●「じつは身近なホタルのはなし」遊磨正秀著、緑書房
蛍の幼虫は川や田んぼにいるものだと思っていたら、水生の幼虫は少数派。おまけにあまり光らない者もいるらしい。その中で、蛍といえばゲンジボタル。その生活を丹念に探っています。幼虫はカワニナを食べますが、襲うことはおろか近寄っていくこともしないで、偶然出会った時に噛みついて口から消化液を出してスープにし啜ります。カワニナと蛍の幼虫の生息場所は微妙に違います。一致していないので、カワニナが食べ尽くされてしまうことはありません。幼虫は土手に移動してサナギになります。標識捕獲法で生息数を調べ、生息状況の年次変化も調べます。川に住むゲンジボタルより、田のヘイケボタルの方が危機的状況です。幼虫の住む田、サナギになる畦。変化が激しい。
お薦め度:★★★ 対象:ホタルが好きな人
【西村寿雄 20250624】
●「じつは身近なホタルのはなし」遊磨正秀著、緑書房
蛍はみんなに親しまれている里山の生き物である。主に川辺に棲むゲンジボタルについて書かれているが、田んぼに多いヘイケボタル、陸地に多いヒメボタルの記述もある。ホタルの暮らしぶりは知っているとホタル観賞にも大切な心得になる。発光の仕組みについては今まだナゾとか。ホタルと言えども地域による固有種がある。安易に移動させないことも重要た。ちょっとした知識でホタル観賞が楽しくなる。
お薦め度:★★★ 対象:ホタル好きの人
【萩野哲 20250614】
●「じつは身近なホタルのはなし」遊磨正秀著、緑書房
著者は半世紀以上にわたってホタルの調査を行い、ホタルの生態の解明のみならず、ホタルと人との関わりについても深く考えてきた。人は自分たちの都合で人工的な環境を広げていき、自然のしくみやサイクルを断ち切ってきた。その結果、本来必要なかったのに、人が世話し続けないと維持できない場所がいかに増えてきたことか(もったいない)。ホタルは一見、人に優遇されているように見えるが、実は一番の被害者かもしれないと著者は嘆き、ホタルを通じて水辺の価値を再評価し、「人-水-生き物」共同体の創出を提唱する。
お薦め度:★★★ 対象:ホタルの生態を知るとともに、水辺の価値を再認識したい人
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