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本の紹介「縄文農耕の世界」
「縄文農耕の世界 DNA分析で何がわかった」佐藤洋一郎著、PHP新書、ISBN4-569-61257-1、660円+税
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【田中久美子 20030423】【公開用】
●「縄文農耕の世界」佐藤洋一郎著、PHP新書
三内丸山遺跡の記事にドキドキワクワクさせられた時期があった。それまで弥生時代が起源とされた農耕文化が縄文時代にまで遡るというので、歴史が覆される快感を覚えたものだ。この本は、その縄文農耕説を、クリのDNA分析を用いて、クリの栽培を例として実証していく。又、どこからが栽培か微妙なところだが、ヒエ、エゴマ、オオムギなどを例に取り縄文農耕に迫っていく。稲作は、大陸からの伝播文化で農耕の起源と言われてきたが、クリの栽培をはじめ、我が国独自の農耕文化はそれ以前からあったのではないか。そうやって縄文時代に思いを馳せるのが妙に心地良い本です。
お薦め度:★★★ 対象:科学も良いけど歴史もね、という人
【魚住敏治 20030423】
●「縄文農耕の世界」佐藤洋一郎著、PHP新書
縄文時代は、狩猟採集の世界だと信じてきた人にとっては縄文農耕と呼べるものが存在下という、ちょっとビックリする話かもしれません。
考古学などで縄文農耕について聞いたことはあるが、あまりピンとこなかった人には、生物学的にはこういう根拠があったのかと、あらためて納得させられる内容になっています。
筆者も本の中で述べているように、あくまでこれは生物学からみた縄文世界の描写です。したがって他の遺物との比定作業は必要になってくると思います。
読後に自分自身でそれをしてみるのも、この本の楽しい読み方かもしれません。
お薦め度:★★ 対象:考古学も好きだという方
【河上康子 20030423】
●「縄文農耕の世界」佐藤洋一郎著、PHP新書
‘縄文農耕’の文字にまず惹かれる。著者が繰り返し述べているように、農耕社会は弥生時代に渡来した水田稲作が幕開けであり、縄文時代は狩猟採集時代であるという認識が強いためであろう。考古学者ではなく、植物遺伝学者である著者が、縄文時代の遺跡から出土するクリのDNA解析をてがかりに、縄文時代の農耕の可能性を説く。栽培の庇護におかれた植物と野生植物との違いをわかりやすく解説し、縄文時代にも前駆的な農耕、栽培が存在したと考えられる理由を説明している。後半は、栽培行為によりヒトが生態系に与えてきた影響や、農耕と栽培植物とはそれぞれの地域独自の文化であるという著者の持論を紹介している。
お薦め度:★★★ 対象:古代の農耕や里山の文化に興味のあるひと一般
【寺島久雄 20030412】
●「縄文農耕の世界」佐藤洋一郎著、PHP新書
新しい遺跡の発掘されて歴史観が見直されている。イネの遺伝学の著者が縄文人は農耕を行っていたと見解から、農耕の人と自然のかかわりと生物学から縄文農耕論を展開している。
縄文に栽培化の跡を認め、栽培は文化、栽培植物は文化財との考えを打ち出している。水田稲作が農耕の始まりという先入観から脱却する視点に立って論じている。
お薦め度:★★★ 対象:考古学と植物に興味ある人
【村山涼二 20030410】
●「縄文農耕の世界」佐藤洋一郎著、PHP新書
三内丸山をはじめ、縄文遺跡で発掘されたクリのDNA多様性が、野生種より少ない。このクリは、栽培されたものではないかと推定し、縄文人が農耕をしていたと推定している。
栽培化の過程で、離層を失い種が落ちにくくなり、休眠性を失いすぐ発芽し、毒をなくす等、植物は野生時代に持っていたはずの器官や物質を失う方向に変化を生じた。遺伝子が突然変異を起こし変化したモノの中から、ヒトは便利なモノを選び守り育て、栽培種の中に遺伝子が蓄えられた。
栽培種は、ヒトと共にでなければ生きて行けない。
栽培には、季節変化の知識が要る。花暦は種をまく時期を教え、文化が生まれる。
栽培により雑草が出来、雑草もヒトにより進化させられた。
など、ヒトによる栽培という攪乱が生態系を大きく変えていることがよくわかる。水田耕作の下の、縄文の農耕文化の研究の重要性が、縄文遺跡の調査で明らかになっている。
お薦め度:★★★ 対象:高校生以上一般
【和田岳 20030424】
●「縄文農耕の世界」佐藤洋一郎著、PHP新書
考古学屋ではなく、植物遺伝学屋の著者が、DNA分析を武器に、縄文農耕にせまろうとする。自身の研究をもとに、縄文時代にクリの栽培植物化が行われていたかを検討する。その後、ヒエ、マメ、エゴマ、ヒョウタン、オオムギなどを俎上にあげて、縄文時代に農耕が始まっていたかを検討。さらには、栽培植物とは何か、農耕のはじまりが日本の生態系や人間に何をもたらしたか、と話は広がる。
日本の農耕の起源と言えば稲作のはじまりと考えがちだが、クリであれ何であれ植物を栽培して利用すれば農耕であるというのは、気持ちよく意表をつかれる。
お薦め度:★★ 対象:日本の農耕の起源といえば、もちろん稲作の伝来だ!と思ってる人へ
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