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本の紹介「海底の支配者 底生生物」
「海底の支配者 底生生物 世界は「巣穴」で満ちている」清家弘治著、中公新書ラクレ、2020年2月、ISBN978-4-12-150676-4、820円+税
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【森住奈穂 20200425】【公開用】
●「海底の支配者 底生生物」清家弘治著、中公新書ラクレ
普段は目にすることのない海底の、さらにその下に隠れて暮らしている生きものたち。彼らに想いを巡らせる。人間からすれば目立たぬ存在の彼らだが、地球全体から見ると私たちよりむしろ主要な構成員であり、地上のミミズ同様海底の砂や泥を攪拌して、海洋物質循環に大きな影響を与えている。体に似合わぬ大きな巣穴を持って、環境美化に一役買っているアナジャコやスナモグリ。砂浜の波間という困難な環境を逆手にとって暮らすフジノハナガイ(ぜひ波乗り行動を観察してみたいなぁ)。吻の部分は珍しくないのに体全体は幻のサナダユムシなど、登場する生きものたちは皆興味深い。巣穴の型取りも楽しそう。静寂の世界だと思っていた深海底が実は巣穴だらけなんて、ワクワクするお話だなぁ!ガッチンガーの活躍にも期待。
お薦め度:★★★★ 対象:底にいるのは誰?かくれんぼでは鬼が好きなひと
【中条武司 20200505】
●「海底の支配者 底生生物」清家弘治著、中公新書ラクレ
干潟を歩くと無数の穴が表面に開いている。けどそのほとんどの住民はわからない。日本では数少ない巣穴(生痕)の研究者である著者は、干潟や砂浜、浅海、はては深海まで生き物の巣穴や這い跡を探し求め、その生活に迫っていく。砂浜にすむ長さ3cmほどのオフィリアゴカイは、潮の干満に合わせて移動しており、海が荒れた時には侵食から逃げるように岸方向に移動するのを、その這い跡から解き明かす。深海生物の生きざまも、津波の後の海の回復も、すべて巣穴や這い跡から調べる。海の底のさらに中の世界は広大で知られていないことがいっぱいだということがわかる。
お薦め度:★★★ 対象:干潟や砂浜に遊びに行ったことのある人
【萩野哲 20200407】
●「海底の支配者 底生生物」清家弘治著、中公新書ラクレ
海の探索は宇宙の探索より遅れているという。更に海底よりも下の世界ともなればなおさらであろう。本書はそのような“未開”の世界の生物(底生生物)に挑むお話である。どのような底生生物がいるのか?どのような生活をしているのか?どのようにしてそれらを解明するのかが、これ以上絞れないだろうと思うぐらい省スペースで紹介されている。ひとつひとつは非常に興味深い内容なので、もう少し詳しく知りたいところだか、次の話題に移ってしまう。もう少し紙数が欲しかったなあ。
でも、本書のメインテーマの1つであるアナガッチンガーについては本書に紹介されている(P.150)ジェンキンズさんのHP で詳しく(メチャ面白い)見ることができた。また、サナダユムシについても、この種が珍しい動物ではないこと、未だに生態を暴くのは難しい状況であることがわかり、変に安心した。
お薦め度:★★★ 対象:底生生物って何?と思う人。しかし、もっと知るためには本書の文献を芋づる式に読み解く必要があるのじゃぞ
【和田岳 20200626】
●「海底の支配者 底生生物」清家弘治著、中公新書ラクレ
水の底で暮らす動物 底生生物。その底生生物を、巣穴からアプローチ。というのが専門の研究者が、巣穴の中での暮らしの一端を紹介する一冊。
アナジャコやシャコといった甲殻類の巣穴に居候するマスオガイ類やヨーヨーシジミ。サーフィンする二枚貝、ガードマンを雇うテッポウエビ、幻のサナダユムシ。海の底では、さまざまな動物が、不思議な暮らしを営んでいる。っていうのが、判って楽しい。章ごと項目ごとにエピソードは独立しているので、好きなとこから読める。その分、全体的なまとまりは薄め。深海巣穴型どり大作戦とか、東日本大震災が岩手県の底生生物に与えた影響は、とてもサラッと書かれている印象。
お薦め度:★★★ 対象:海の底の穴の中で暮らす生き物に興味があれば
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