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本の紹介「カニの歌を聴け」

「カニの歌を聴け ハクセンシオマネキの恋の駆け引き」竹下文雄著、京都大学学術出版会、2022年4月、ISBN978-4-8140-0395-2、2000円+税


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【森住奈穂 20220825】【公開用】
●「カニの歌を聴け」竹下文雄著、京都大学学術出版会

 ひとことで言えば地味な研究である。炎天下の干潟に這いつくばって、ハクセンシオマネキという小さなカニをひたすら追いかける。片側だけ巨大なハサミをフリフリしてメスへ求愛しているオスは、メスが近づいてくると巣穴に入って「グーッ、グーッ、グーッ」という求愛音を出すそうな。この求愛音を聴いて、メスガニでもないのに恋に落ちてしまった著者は研究を開始。メスの配偶者選択への影響に始まり、オスの栄養状態、近隣オスの妨害、体色の変化と、研究テーマは泉のように湧いてくる。調査道具は味噌漉しやバーベキュー用の竹串などで手作り。 乾燥標本を使ったメスのダミーも手作り。アナログな手法に惹かれてしまう。繁殖期の一夏の干潟での全力投球の記録。

 お薦め度:★★★  対象:行動生態学に興味のあるひと
【萩野哲 20220804】
●「カニの歌を聴け」竹下文雄著、京都大学学術出版会

 干潟でも最も目立ったカニのひとつであるハクセンシオマネキについては、過去に多くの研究者が調査研究を行い、興味深い生態的・行動的事実が明らかにされてきたが、まだまだ多くの疑問が残されている。本書は、ハクセンシオマネキの配偶者選択を研究テーマにして、オスの求愛音とそれに対するメスの反応や、栄養状態、ライバルの存在などなど、一筋縄ではいかない本種の恋の駆け引きを炎天下で調べ続けた著者の2013年からの記録である。コラムで紹介されていたハクセンシオマネキ近似種の“なわばり連合”は、その種が個体識別を含め、複雑な社会関係を持つことを示していて興味深く、ハクセンシオマネキの場合も益々解明しなければならぬ事項は増え続け、研究者による炎天下の観察も続くのであろう。

 お薦め度:★★★  対象:ハクセンシオマネキの興味深い生態とその研究者の苦労を知りたい人
【和田岳 20220825】
●「カニの歌を聴け」竹下文雄著、京都大学学術出版会

 「ハクセンシオマネキのオスは巣穴の中で鳴くよ」という言葉を耳にした著者は、その声は、メスへの求愛なんじゃないか?というアイデアから研究を始める。そして、ハクセンシオマネキの配偶行動研究の沼にはまっていく。
 オスのハサミの歯の形態、オスの背甲の色も調べ、これでもか!とハクセンシオマネキの配偶行動にひたれる。その合間に、論文投稿や進路の話。炎天下の干潟で野外実験を繰り返し、炎天下の干潟でメスの追跡観察を行い、熱中症で倒れないのが不思議。

 お薦め度:★★★  対象:ハクセンシオマネキの配偶行動の研究の話に興味があれば
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