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本の紹介「環境DNA入門」
「環境DNA入門 ただよう遺伝子は何を語るか」源利文著、岩波科学ライブラリー、2022年11月、ISBN978-4-00-029715-8、1200円+税
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【森住奈穂 20230622】【公開用】
●「環境DNA入門」源利文著、岩波科学ライブラリー
2009年、コイヘルペスの研究から偶然に、水槽の中に棲む魚のDNAが大量にそこにあることに気づいた著者。この発見を「へ〜」で終わらず、生息調査に使えると喝破したご友人、天晴れ。世界初とはいかなかったものの、複数種をまとめて検出する方向に舵を切り、環境DNA分析という新しい分野を切り拓くことになった経緯が前半。調査の実際が後半。「川で水をくめば、そこにいる魚を全部まとめて検出できる」という魔法のような手法は、最初こそ胡散臭く捉えられたようだけれど、今では哺乳類や鳥類、ネッシーや感染症と、幅広く応用が進んでいる。冷凍保存可能。堆積物からの過去調査も可能。幅広すぎる。現場作業が採水と簡単なろ過で済むため、市民参加のしやすさも魅力的。河童やツチノコだって!みんなで調べると楽しそう。
お薦め度:★★★ 対象:日進月歩の科学の世界を感じたいひと
【里井敬 20230622】
●「環境DNA入門」源利文著、岩波科学ライブラリー
1980年代にPCR法が開発され、DNAの分析による研究が進んだ。水中の微量DNAから棲んでいる魚の調査法の開発では、対象とする1種の魚に対する研究ではフランスチームに先を越されたが、複数の魚種のDNAを検出する実験では1番最初に発表できた。
この技術を使うと生物の生息範囲や数量を捕獲しなくても推測できる。水中の生物だけではなく、水飲み場を利用する生物を調べる事も出来る。希少種・絶滅危惧種だけでなく「ネッシー」の探索にも利用できる! 繁殖時期を調べたり、堆積物を利用すればデータのない津波の前の環境も分かる。
水をくんでくるだけで、または湖底の泥や永久凍土の中や、かじられた葉・ヒルの血、あらゆる所にDNAがあり、可能性を秘めている。
お薦め度:★★★★ 対象:環境DNAという言葉を初めて聞いた人も知ってい
【萩野哲 20230601】
●「環境DNA入門」源利文著、岩波科学ライブラリー
環境から水を一杯汲んできただけで、そこにいる魚の種類が分かる!10年ちょっと前までは夢のような話だったし、当時の学会発表では無視されてしまった。研究のきっかけは、著者がコイヘルペスのウイルスを追っていたらコイのDNAが大量に検出されたこと。水をくむだけで棲んでいる魚種がわかったら、魚類調査などに革命をもたらすのでは? 2015年に公表されたオオサンショウウオの研究成果のインパクトは大きく、国内で環境DNAの利用が進むきっかけとなった。このような特定単一種を検出する種特異的解析と複数種をまとめて検出する網羅的解析(=環境DNAメタバーコーディング)の飛躍は次世代シーケンスの技術的発展の貢献が大きい。魚類では琵琶湖や日本全国の沿岸を網羅する一斉調査に活用されている。国際的な競争が激しい中、この技術は水中の生物に限らず、鳥や哺乳類の検出系や血液、堆積物などへの応用、更に、エピジェネティクスとの組み合わせや環境シングルセル解析への実用化が期待されている。
お薦め度:★★★ 対象:環境DNAという言葉が気になる人
【和田岳 20230623】
●「環境DNA入門」源利文著、岩波科学ライブラリー
日本で最初に環境DNAに取り組んだ著者が、環境DNA研究を始めた経緯、環境DNAの解説、その可能性を紹介した一冊。
環境にはDNAがいっぱい、と軽く書いた後、まずは著者が環境DNAの可能性に気付いた経緯。生物の体外に出たDNAは短時間の間にバラバラになると思われていた時代に、コイのヘルペスウイルス研究の中で、水中には想定外に多くのコイDNAがあり、環境中のDNAから生物相を調べられる可能性に気付く。が、先陣争いでフランスチームに敗れる。
それから環境DNAを用いて特定の種がいるかいないかの研究例。ブルーギル、オオサンショウウオ、タナゴ類、そして舞鶴湾のマアジの個体数。つづいて、生物相自体を調べる環境DNAメタバーコーディングの紹介。一番進んでいる魚の話(MiFish)が中心。
最後は、これからの可能性の話。環境DNA濃度をモニタリングによる繁殖期や個体数の季節変化などの把握、新鮮なDNAをより分けて生きた個体の存在だけを抽出する可能性、空気中のDNAなど。一方で、環境DNAの限界や課題にはあまり触れられていない。
お薦め度:★★★ 対象:環境DNAでなにが出来るか知らない人
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