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本の紹介「カラスの教科書」

「カラスの教科書」松原始著、雷鳥社、2012年12月、ISBN978-4-8441-3634-7、1600円+税


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【冨永則子 20130422】【公開用】
●「カラスの教科書」松原始著、雷鳥社

 「ゴミを荒らす」とか「怖い」「襲われそう」などと嫌われモノのカラスだが、そのカラスが趣味とまで言う、自らを“カラスばか”と称する著者による、まさしく“カラスの教科書”。
 カラスの行動を人に例える表現には思わずニンマリしてしまう。高校の教科書を意識したようなソフトカバーの装丁もご愛嬌。マンガ風イラストも笑える。この分厚さと読み応えで1600円とはお安いが、自分の書棚に並べるには、ちょっと邪魔かな?
 カラスの行動もさることながら、それを観察している著者を観察してみたい。きっと、一般人からはヘンな人に見えるんだろうなぁ…
 街中でカラスは身近な生き物だから、ヘンな人に見られても、じっくりカラスを観察してみたいと思った。

 お薦め度:★★★★  対象:カラス好きに、都市の生き物に興味のある人に

【高田みちよ 20130425】
●「カラスの教科書」松原始著、雷鳥社

 真っ黒で個体識別どころか、ハシボソガラスとハシブトガラスの2種類がいることもあまり知られていないカラス。本書では、一般にはあまり知られていないカラスの行動が、やわらか〜い文章で紹介されている。カラス同士でもお互いの見分けがついていないんじゃないか、というエピソードや、攻撃されないために知っておくべきカラス語など、誰かに話たくなるような面白い話が満載。マンガチックな挿絵もかわいい。全体的にゆるいのに、カラス対策は「捕殺は効果がない」など、行政に読ませたいカラスの生態についてもきっちり書かれている。これを読めばカラスのことはそこそこわかる1冊。

 お薦め度:★★★  対象:カラス怖い、きらい、な人にこそおすすめ

【萩野哲 20130424】
●「カラスの教科書」松原始著、雷鳥社

 普通以上に生息しておりながら、カラスほど理解されていない動物は他にないだろう。カラスは、まず雌雄差がよくわからない。次に、大変よく似た2種が混在していて、更にややこしい。実際、小鳥でもなく、大型でも保護すべき希少種でもなく、ありふれており、しかも頭がよくて研究妨害までする鳥をあえて研究対象に選ぶのを躊躇する、との研究者側の事情もある。それで本書を読み進めてみると、カラス同士でも間違う局面がある事例に行き着いた。それ見ろ、本人(鳥?)でもわからないのに、人間にわかるわけない、と少し安心した。それでも、カラス避けに最も効果があるのはゴミ対策であると明確に書いてあるし、何だか語り口も楽しいし、分厚い割に字も大きくて(最後の「よくある質問」コーナーはあまりにも字が大きくて、少しムカつくが)、楽しい絵もたくさん挿入されているので、それほど読むのに時間がかからないし、とにかく読後にちょっとはカラスに好感を持つかもしれない力を秘めている本である。

 お薦め度:★★★  対象:好きでも嫌いでも、少しはカラスに関心を持っている人

【六車恭子 20130426】
●「カラスの教科書」松原始著、雷鳥社

 著者も言うように本書は、大まじめな「カラスの教科書」であり、マニアによる「カラスの教化書」をもくろみ、その効果はまごうかたなく「カラスの狂歌書」の軽みに到達した意欲作である。本の作りは廉価な漫画本の体裁であり、読むほどにカラス君の事情に身につまされ、最後には「カラス頑張れ!」的な親愛の情に包まれてしまう貴書と言えるかもしれない。神話からひも解くカラスの存在感は、むしろこの鳥が恐れあがめられ尊ばれていたいにしえの人との関わりを再考するいい契機になるだろう。満ち足りて読了出来た本である。

 お薦め度:★★★★  対象:日常的にカラスを目撃するすべての人に

【和田岳 20130409】
●「カラスの教科書」松原始著、雷鳥社

 この本は、「カラスの教科書」であり「カラスの強化書」であり「カラスの教化書」であり「カラスの狂歌書」であるんだそうな。全体的にこんな感じ。著者は卒論からカラスを見始めて、大学院でもカラスを見続け、ついにカラスで博士号をとり、就職してからもカラスを見続けているカラスオタク。カラスへの愛と知識と見続けてきた時間は半端ない。とてもゆるいイラストと軽い文体でつづられているけど、その一言には重みがある。
 エピソードをまじえてつづられるカラスの子育て、採食行動、遊びの話はとても面白い。ゴミ捨て場でのカラスの行動、カラス除けグッズの紹介はとてもためになる。巣の近くてカラスに襲われないための、初級カラス語講座は、安易にカラスの巣を落とす前に、まず読んで欲しい。これからのカラスとの楽しい暮らしのために欠かせない一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:良くも悪くもカラスが気になる人

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