【冨永則子 20170611】【公開用】
●「カラスと京都」松原始著、旅するミシン店
『カラスの教科書』で一躍カラス研究者として名を馳せた松原氏が京都でおくった大学時代のお話。1992年の入学から院生までの6年間が時系列で語られている。動物学やフィールドにあこがれて晴れて京大生となった男の子(?)が如何にしてカラス研究者になるか… 1993年から記録し始めたフィールドノートを元に記憶を辿ったとのことだが細かいディテールまでよく覚えてるなぁと感心する。一番感心したのは、やはり4年も浪人してたってこと。四浪のモチベーションはスゴイなぁ。それと、学部生から合計15年間も奈良の実家から通ったってこと(家に帰らないことも度々だったようだが…) お母さん、タイヘンやったんかなぁ そんな事ちっとも気にしないお家なんかなぁ。
お薦め度:★★★ 対象:1990年代初頭、バブルが崩壊し始めた頃のイカキョーの生態に興味がある人に
【和田岳 20171024】【公開用】
●「カラスと京都」松原始著、旅するミシン店
まず思ったことは、ようこんな恥ずかしい本書いたなぁ。ってこと。
カラスマニアの著者が、1990年代前半に京都大学で過ごした学生時代のことを書きつづった一冊。大学入学から始まり、バイトで屋久島のサル調査や福井でのクマ調査にいったこと、野生生物研究会での時間、呑みに行ったこと、思い出に残る講義、はじめた頃のカラスの観察、院試、そして就職。極めて私的な思い出話が続く。
ほぼ同時代の京都大学周辺を知っているので、とても懐かしく読めた。いっぱい補足もできる。でも、普通の人がこれを読んで面白いか?
お薦め度:★★ 対象:1990年代前半までの京都大学の学生の雰囲気が知りたい人、あるいは松原ファン
【西本由佳 20170609】
●「カラスと京都」松原始著、旅するミシン店
大学ってこんな無軌道な場所だったろうか。こんなむちゃくちゃな先生や単位履修や学生が存在していいのだろうか。いまから20年以上昔の時間と京大という場所はそれが許されたのかなと思うと、作者の感慨に少ししんみりする。生きものが好きで勉強もけっこう好きな作者の時間はとても濃い。食堂でサンマの塩焼きからアニサキス(寄生虫)をうれしげに探しながらご飯を食べる友人の存在が、生物系の人たちの世界を物語っている。カラスもちょっとずつ調べ始めている。『カラスの教科書』などではおもしろい話満載のように見えたが、毎日観察できることはかなり地味。根気って大事なんだなあと思う。ハシボソガラスのβちゃんはどうなったのかと気になった。
お薦め度:★★★ 対象:古きよき(?)時代の学生生活をかいまみたい人
【森住奈穂 20170616】
●「カラスと京都」松原始著、旅するミシン店
現在東京大学総合研究博物館で勤務する著者は、京都大学で15年を過ごしている。カラスを研究テーマと定めて以来、カラスに愛情をそそぎ続ける著者。本書はそんな著者の大学4年と院2年間を、当時メモ帳としても使用していたフィールドノートを基に書き起こしたものだ。自由の学風で有名な京都大学。その象徴としてたびたび登場する折田先生像。特にページが割かれているのは1994年。サル調査のために屋久島で正月を迎え、帰りは気ままに釣りを楽しむ青春18切符の旅。大学3年目、仲間たちとのお酒のアテは、液状化タヌキ話。観光ガイドには載らない著者ならではの京都案内も楽しめる。「自分の時間は全部、自分とカラスだけのもの」だった時代の記憶。
お薦め度:★★★ 対象:90年代の京大の空気を感じたいひと