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本の紹介「化石に眠るDNA」
「化石に眠るDNA 絶滅動物は復活するか」更科功著、中公新書、2024年2月、ISBN978-4-12-102793-1、1000円+税
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【和田岳 20240628】【公開用】
●「化石に眠るDNA」更科功著、中公新書
古代DNA研究の前夜から現在に至る歴史が紹介される。最後の2章では、絶滅動物の復活の試みを紹介しつつ、技術的問題点と倫理的問題点を総括する。
冷凍マンモスなどのタンパク質研究を経て、古代DNA研究への動きがはじまる。最初の研究例は、絶滅したシマウマ、クアッガのDNAを剥製から抽出する試み。続いてエジプトのミイラのDNA研究。そして、この分野の黒歴史である恐竜DNA狂想曲。「ジュラシック・パーク」がそのきっかけだったとは…。結局、信頼できる恐竜DNAの抽出は達成されず地に堕ちたこの分野の評判は、ネアンデルタール人のDNA研究で復活する。
技術的詳細が丁寧に説明されるが、面倒なら読み飛ばしていいかも。押さえておくべきはPCR、そして次世代シークエンサーの登場くらい。
絶滅種復活の試みの話では、その手法としての戻し交雑、クローン、遺伝子編集の試みが紹介される。一番見込みがあるのは遺伝子編集かもしれないが、道のりは遠そう。そして倫理的には、“生態系の復元”とは何か?可能なのか?という点が考察される。絶滅種の再導入の影響についての考察は、多くの人が一読すべきと思う。
お薦め度:★★★★ 対象:近いうちに恐竜やマンモスを復活させられるんでしょ!と思ってる人
【犬伏麻美子 20240628】
●「化石に眠るDNA」更科功著、中公新書
本書は、科学者たちによる古代DNAの研究の歴史を紹介したもので、分子古生物学が専門の筆者が「DNAとタンパク質、アミノ酸の分析の研究など」から始まり「マンモスや恐竜の復活にむけての研究など」9章にかけて丁寧にわかりやすく説明してくれている。筆者の知識量と経験量の豊富さが、伝わってくる。化石は、その形から過去の生物を推測するだけでなく、その中に残されているDNAを使って、過去の生物の生活の痕跡を調べたり生きざまを推定したり、絶滅種の復活が試みられている。希望と絶望が交互に何度もやってくるDNAの研究は、今後の地球や生命をめぐるありかたや生命倫理感も考えさせられる。
お薦め度:★★★★ 対象:絶滅した生物を科学技術で復活せることに夢を持っている人たちへ
【西村寿雄 20240623】
●「化石に眠るDNA」更科功著、中公新書
化石の古代DNA解析を研究してあわよくばその動物を復活させないかと試みる研究者がいる。その経過と現状がくわしく書かれている。ある学者は琥珀に目を付ける。琥珀の中に取り込まれている昆虫のDNAは何とか取り出したものそれはその昆虫のものかどうか。PCRの技術も確立されたが・・。ミイラではどうか。ネアンデルタール人、マンモスではどうか。恐竜ではどうか。なんとかDNAは取り出せるが…。絶滅した動物の復活はなるか。研究者の戦いは続く。
お薦め度:★★★ 対象:DNAに関心のある人
【萩野哲 20240517】
●「化石に眠るDNA」更科功著、中公新書
現生生物のDNAを取り出すのはクワコーの財布から直接硬貨を取り出すようなものだが、化石のDNAを取り出すのは無人販売所にクワコーが入れた硬貨を取り出すようなものだ。誰が入れたか特定できない。それと同じで、古代DNA研究は真偽性を尺度に考える必要がある。そのためには、まずコンタミを排除する手法を確立し、次に当該種の断片化したDNAを復元する技術が必要だ。PCRや次世代シーケンサーといった新技術、手法の確立、そしてスヴァンテ・ペーボのような再現性を重視する“玉”の研究を行う優秀な人材、更には「ジュラシックパーク」の貢献も大きい。さて、絶滅種は復活するか?選択的交配、クローン作製、遺伝子編集。時間はまだまだかかるだろう。仮にマンモスが復活したとして、思惑通りシベリアの環境は改善し、地球温暖化に歯止めはかかるだろうか?絶滅種より、絶滅危惧種を救う方が先決では?ヒトへの影響は?
お薦め度:★★★ 対象:絶滅種をどうやって復活させるのか興味がある人
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