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本の紹介「カタニア先生は、キモい生きものに夢中」

「カタニア先生は、キモい生きものに夢中」ケネス・カタニア著、化学同人、2022年8月、ISBN978-4-7598-2081-2、2300円+税


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【萩野哲 20221008】【公開用】
●「カタニア先生は、キモい生きものに夢中」ケネス・カタニア著、化学同人

 一番重要な問題は未解決だ。本書は著者自ら研究したホシバナモグラ、ヒゲミズヘビ、ミミズ、トガリネズミ、デンキウナギ、エメラルドゴキブリバチの捕食または回避行動の事例を専門の神経科学的側面から紹介している。動物好きならば聞いたことがあろうと思われるこれらの種の行動を、更に一歩踏み込んで謎を解明していく過程がすばらしい。1種1種読み進み、「こんな面白い事例はなかろう」と思っていると、次の種ではもっとスゴい展開が待っている。なぜ魚はヒゲミズヘビの口に向って逃げるのか?デンキウナギに関するフンボルトの「眉唾話」は信じてよいのか?ゾンビの研究から新たな抗菌剤やパーキンソン病治療への応用が期待できるのか?土中のミミズは掘らずに捕獲できる!オジサンがいつもウナギ釣り用のミミズを掘っている大阪城公園で、「ワームグランティングをやりたい」と公園管理事務所に申請したら認められるだろうか?原題は”Great Adaptations”と素晴らしいのに、日本語訳のタイトルが悪過ぎるのが本書の唯一の欠点であろう。

 お薦め度:★★★★  対象:読書のセレンディピティを体験したい人
【森住奈穂 20221019】
●「カタニア先生は、キモい生きものに夢中」ケネス・カタニア著、化学同人

 「キモい生きもの」とは、見た目も生態も、我々人間とはかけ離れた生きもの。当然謎が多い。ホシバナモグラ、ヒゲミズヘビ、ミズベトガリネズミ、デンキウナギ、寄生バチ。著者のカタニア先生は、専門の神経科学を駆使して生きものたちの謎に迫り、結果、とんでもなく魅力的な生態を明らかにしてゆく。その過程がまた面白い。実験方法はシンプル、導き出す答えはエレガントという彼の頭脳にも驚く(失敗や回り道を全部盛り込むと本の厚みは10倍になるそうだけど)。
 ホシバナモグラのあの鼻には、桁外れの触覚神経繊維が密集していて、しかも感覚解析には視覚動物で使われるシステムの触覚バージョンが利用されているそうだよ!ヒゲミズヘビのJ字型待ち伏せ姿勢の謎はねぇ…、と誰かに話したくなること請け合い。これは読んでみなくちゃ。

 お薦め度:★★★★  対象:びっくりしたいひと
【和田岳 20221016】
●「カタニア先生は、キモい生きものに夢中」ケネス・カタニア著、化学同人

 アメリカの動物行動学者が、動物の行動(とくに捕食行動)、自分の研究成果を次々と紹介していく。捕まえてきて飼育下で、動物の行動の至近要因を解明する昔ながらの動物行動学。しかし、最新の撮影装置などの機器を投入し、実験方法を工夫することで、新たな展開がつながっていく。すでにある程度研究されている対象から、次々と新たな発見をしていくのが面白い。読後感はミステリを読んだ感じ。
 登場するのは、ホシバナモグラのホシバナの謎、そして、ヒゲミズヘビの魚を捕食する行動、ワームグランティングでミミズが地表に現れる謎、デンキウナギの電気パルスを使った探索と捕食行動など。
 内容は最高に面白いが、邦題が最悪。原題の「Great Adaptations」や内容を反映した邦題に修正した方がよかろう。

 お薦め度:★★★★  対象:動物の行動に興味のある人
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