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本の紹介「カワセミの暮らし」

「カワセミの暮らし」笠原里恵著、緑書房、2023年4月、ISBN978-4-89531-884-6、2200円+税


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【森住奈穂 20230818】【公開用】
●「カワセミの暮らし」笠原里恵著、緑書房

 カワセミと聞いて思い浮かべるのは、やはりあの翡翠色。遠くからでもキラリ。身近というほど近くにはおらず、出会えるとテンションが上がる人気の鳥だ。そんなカワセミは、いったいどんな暮らしをしているのか、詳しく綴った本は珍しい。特に繁殖調査の様子が面白く、水辺の巣穴は温度も湿度も高そう、魚食、天敵、巣穴は複数回利用…いろいろ大変そう(カワセミも観察する人間も)!ヤマセミが釣り人を気にして巣穴に戻れなくなっている様子には心が痛むし、気配を消して観察する著者もすごい。
 河川に生息する鳥類全般を研究対象にしている著者は、カワセミ以外の川の鳥についても頁を割き、変化し続ける河川環境全般にも目を向けさせる。たくさん勉強ができる一冊。

 お薦め度:★★★  対象:「カワセミ」を知っているひと
【西村寿雄 20230616】
●「カワセミの暮らし」笠原里恵著、緑書房

 「鳥の宝石」とも呼ばれ青や緑などに輝いてじつに美しい鳥、カワセミについて特徴から生活について書かれた本で中学生ぐらいから読める。最初にカワセミの基本的な体系について書かれ、あの美しい羽根の色は構造色によると豆知識にある。カワセミの羽根はスポンジ層になっていて、光が当たるとさまざまに変化する。カワセミの巣は土手に作られるが、その巣作りについても観察した記録がくわしく書かれている。カワセミに人気があるのは、あのダイビングの姿。ダイビングは待ち伏せとホバリングがあるという。最後にカワセミが生きる環境保全にもふれている。

 お薦め度:★★★  対象:カワセミに魅せられた鳥ファン
【萩野哲 20230620】
●「カワセミの暮らし」笠原里恵著、緑書房

 本書はまずカワセミのサイズ、体の各部の解説、分類、繁殖(巣、求愛と給餌、卵と抱卵、避難の成長、捕食者、なわばりなど)について他の鳥との比較を含めてわかりやすい図や写真を多用して要領よく解説している。特に面白いと思ったのは巣穴で、土壁の奥に向かってやや上向きの50〜80cmの横穴を掘ったその奥にやや広い産室がある構造である。想像するだけでも大変な巣作りだが、さすがに何年も使用されることが多いようだ。産座にはペリットが敷き詰められているらしい。巣立ちまでにヒナが食べた魚の量はチェコの研究例では一羽あたり334gだそうだ。大抵の小鳥は昆虫を餌としてヒナを育てるので、繁殖時期は昆虫が多数発生する春〜初夏に限られるが、周年手に入る魚で育てるカワセミの繁殖期は長い。カワセミの移動、増水の影響、釣り人との関係、川づくりにも触れており、カワセミやその他の鳥がかかえている問題点などについても理解を得ることができる。

 お薦め度:★★★  対象:カワセミについて、周辺知識も含めた情報を知りたい人
【西本由佳 20230618】
●「カワセミの暮らし」笠原里恵著、緑書房

 カワセミは水辺で暮らす青い鳥。羽色が美しく、ちょっと寸詰まりな体型がかわいい。水の汚染が進んだ時期には身近な川から姿を消したが、水質の回復とともに戻ってきた。主食は魚で、その時期・その場所で手ごろなサイズの魚を獲って丸のみする。土の崖に穴を掘って子育てする。本では、カワセミの仲間のヤマセミや、海外のカワセミなどにも目を向ける。カワセミは川に依存する鳥で、同じように川に住む鳥もたくさんいる。そういった鳥たちの紹介や、鳥たち、ひいてはそれを支えている他の生きものたちにとっての望ましい川とはどんなものか、ということにも話は及ぶ。人が河川環境を整えるにあたって生きものを視野に入れ始めたのは日本ではここ20年ほどのことで、より良い川のために模索が続いている。

 お薦め度:★★★  対象:川辺の鳥たちの環境を理解したい人
【和田岳 20230623】
●「カワセミの暮らし」笠原里恵著、緑書房

 カワセミの暮らしを中心に、ヤマセミの暮らし、そして河川で繁殖する鳥たちを紹介した1冊。
 最初にカワセミの基礎知識を紹介した後、長野県千曲川での研究成果をベースに、カワセミの巣穴、つがい関係、捕食者、なわばり、育雛、繁殖期と繁殖の詳細が紹介される。カワセミの巣穴がどうなってるのかよく判る。そして、カワセミの採食行動と食べ物の話。どんな高さから飛び込んで、どんな魚を食べているか。
 カワセミの後はヤマセミ。営巣環境、食性、採食行動がカワセミと比べながら紹介される。警戒心の強いヤマセミは、釣り人がいるとヒナにエサを運べないんだそう。バードウォッチャーもよく覚えておこう。
 近年ヤマセミとササゴイが減ったという。その原因は、どうも魚類相の変化にあるらしく、そこに外来魚の増加もからんでるらしい。
 最終章の「生きものに配慮した川づくり」を含め、カワセミについて詳しくなれるだけでなく、河川生態系について考えるきっかけになる本。

 お薦め度:★★★  対象:カワセミなど河川の鳥に興味がある人
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