現在の日本の河川改修・ダム建設のあり方に異議申し立てをする啓蒙書。
1章の瀬と淵の現れ方、サケやイトウの産卵床、河畔林とそこから供給される虫たちなどの話は、美しいモノクロ写真の数々とともにまるで北海道の釣りの本を眺めているような心地よさを味わわせてくれる。一転して2章からは鉄管の中を流れる大井川や、「川の水を返せ」のデモ行進の写真などが掲載されている。3章では、筆者が代表を務める「北海道の森と川を語る会」が「語り合う」ことを目的とする会から反対運動へ方向転換したいきさつや、スイスの近自然河川工法視察旅行の様子が紹介されているが、駆け足で書かれていて説得力に欠ける。4章以降は、日本の建設省、農水省、あるいは自治体の公共土木事業のあり方がひたすら批判されている。
筆者のあとがきによると、最近は「川がだめになる」ということがどういうことかわからない人もいるので、その説明にもページをさいた、とのことであるが、本書の良い部分は、むしろその「説明」の部分と、巻末の丁寧な参考文献リストであろう。本書では、川の流域に住むさまざまな価値観を持つ人びとの暮らしや、公共土木事業と過疎地の関係については全く触れられておらず、平板な印象は免れない。
お薦め度:★ 対象:初級・素直な人