友の会読書サークルBooks

本の紹介「火山はすごい」

「火山はすごい 日本列島の自然学」鎌田浩毅著、PHP新書、2002年6月,ISBN4-569-62226-7、740円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。

[トップページ][本の紹介][会合の記録]


【魚住敏治 20030218】【公開用】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 普通私たちが新聞やテレビで「火山」という言葉に接するのは、災害という非日常的な場合が多く、どうしても「恐ろしい物」という印象を持ちがちです。もちろんこの本でも火山の恐ろしさについては書かれています。でもそれ以上に、人知を越えた火山の「すごさ」「すばらしさ」について力を入れて書かれてあります。
 一つ一つの用語についても、簡潔に説明されていて、なおかつ教科書のように無味乾燥な物になっていません。おそらくそれは、筆者が実際に出会った5つの火山(阿蘇山、富士山、普賢岳、有珠山、三宅島)の実況中継として、臨場感をもって書かれているせいなのでしょう。ちょっと変わった理科の副読本としても面白いのではないでしょうか…。

 お薦め度:★★★  対象:火山に興味はあるけど、まったくなにも知らない人

【河上康子 20030220】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 とても印象的なプロローグにまず引き込まれる。著者の火山への愛とこの本に賭ける想いを惜しげもなく広げてみせてくれる。以後各章ごとに、阿蘇山、富士山、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島、と日本の代表的な火山の成り立ちや構造、活動の歴史を、切り離すことのできない火山災害との闘いの記録を交えながら、ドキュメンタリータッチで描く。火山学者であるが、書くこと、伝えることにこだわりを持つという著者らしく、素直で真摯な文章は、まっすぐこちらの心に届く。また、「普及・教育活動は研究者の責務」と言われるが、著者が火山のとりこになるきっかけをつくった、ひとりの火山学者との出会いには、それがいかに重大で尊い責務であるかを思い及ばせてくれる。

 お薦め度:★★★  対象:日本の山を美しいとおもうひと広く一般

【瀧端真理子 20030209】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 一気に読める火山の入門書。扉のカラー写真8枚がすばらしく、航空写真でみる火山のさまざまな表情は旅ごころをくすぐる。筆者はやる気のない学生だったが、地質調査所に就職し小野晃司さんに出会ったことで、みるみる変貌してゆく。この本は「私の経験した火山のすごさ」を書き綴った、阿蘇山・富士山・雲仙普賢岳・有珠山・三宅島の同時代史。有珠山でのガラス片による噴火予測、三宅島の海の下でのマグマの移動などが、やさしく解説されている。現在まだ分からない問題がたくさんあることを、隠さずに伝えているのも好感が持てる。思わず巡検に出たくなる1冊。

 お薦め度:★★★  対象:山と旅の好きな人

【寺島久雄 20030215】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 阿蘇山に出会って180度人生が変わって、自然のすばらしさを知る著者が、富士山には古い二つの富士山があり、予知が出来た有珠山、予想より4年も早く噴火した三宅島と、火山に魅せられた記述である。
 堆積物から過去の歴史をひもとき、火砕流の被害と研究を進化させて、自然に対する正しい情報とものの見方の両方を提供している。
 そして予期できない噴火災害が起きることを予想することが大切だと言っている。
 プロローグで「研究内容を専門家に読ませるだけでなく、世間にわかりやすく伝える技術をもつ必要がある。」「自分がおもしろがって初めて、科学のおもしろさが社会全体に伝わる。」と科学のおもしろさをわかりやすく伝える大切さを教えている。

 お薦め度:★★★★  対象:自然を愛する人

【中条武司 20030208】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 日本に住んでいる限り無関係でいるわけにはいかない火山。しかし、私たちの持っている火山に対する知識はあまりにも少ないのではないだろうか。「火山はすごい」というちょっと変わったタイトルの本は、誰もが知ってる火山を例に挙げて、火山の魅力・恐ろしさから現在の研究や噴火予知の現状までを詳しくわかりやすく述べた好著である。ニュースでよく聞く「火砕流」「水蒸気爆発」「低周波地震」など火山だけにしか使われない難しい用語も丁寧に解説されており、内容をよく理解できる。
 ただプロローグとエピローグが冗長なのと、博物館に対する記述が少し不満。エピローグの記述などは(書いていることに納得はできるものの)本論には全く関係なく、ここで書くべきものか理解に苦しむ。とはいったものの、地球科学関係の書籍で、読みやすさと内容をこれだけ伴った本はなかなか見られないので高評価。

 お薦め度:★★★  対象:中学生以上、富士山が火山とは知らなかった人

【西村寿雄 20030123】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 この本はたんに火山学の本としてではなく、科学の啓発書の一つとして書かかれている。科学、学問への入門書としてぜひ推薦したい。
 具体的には、阿蘇山、富士山、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島の各火山を取り上げ、それぞれの生々しい火山活動が書かれている。いずれの火山も著者が直接観測に出かけている。火砕流、カルデラ、巨大噴火、火山性微動、火砕サージ、土石流、火山ガス、発泡現象、水蒸気爆発、マグマ水蒸気爆発、軽石、亜硫酸ガスなど、知っていた方がいい火山用語も丁寧に解説されている。ハザードマップ、危機管理システム、警戒区域、自己管理、火山情報など、火山災害への備えについても言及している。

 お薦め度:★★★  対象:中・高校生以上

【西村寿雄 20021202】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

  〈火山学〉を啓発書として書き上げた著者の意図はよく理解できる。また、具体的な火山事例として取り上げられている記述もわかりよい。そういう意味でこの本は科学の普及書としてひとつの問題提起をしている本である。
 内容的には、火山についての体系的な知識を得るというよりは、今活動している生々しい火山と研究者とのドキュメンタリー物語の感がある。これはこれで、火山について興味深く読める本となっている。
 ただ、初めに長々と書かれているプロローグは良くない。最初にこれを読み出して読む気をなくしたほどだ。著者の意気込みはわからないではないが、前書きでおしつけがましくくどくど書く必要はない。第1章以下の中身で著者の意図は十分に読みとれる。私個人的には、ここに紹介されている各火山の地質巡検には何度も参加していて体験的にも興味があったので、最初のいやな思いにもめげずに読み出した。ところが読み出してみるとすごく読みやすいと感じた。
 この本では、阿蘇山、富士山、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島の各火山について火山の特徴や生々しい火山活動の現状が書かれている。いずれの火山も国民にとって今最も関心のある火山である。
 「阿蘇山」では、地質図、断層、陥没、火砕流、カルデラ、巨大噴火、溶結凝灰岩などの基本的な言葉がていねいに解説されている。また、阿蘇火山灰が北海道にまで到達していることや海上を走る火砕流の話、マグマから出てくる亜硫酸ガス、地磁気の観測など興味深い話が出てくる。「富士山」につては、過去の噴火を顧みながら、有感地震、マグマだまり、貫入、火山性微動などの説明がある。
 ここで、著者は、〈岩屑なだれ〉という用語をあえて〈岩なだれ〉と表記している。この言葉について平易性を力説しているが、〈岩屑なだれ〉と〈岩なだれ〉とは若干のイメージの違いはある。たとえ聞き慣れない専門用語でも、その真意がわかれば特に難しい言葉だと読者は思わないのではないか。現に〈火砕流〉〈活断層〉という言葉はもう一般化している。
 あと、「雲仙普賢岳」「有珠山」「三宅島」についてもそれぞれの火山の特徴についてかなりていねいに書かれている。これらの火山はまだ人々の記憶に新しい。まさに、生々しい火山活動につてのレポートになっている。ここでは、火砕流、火砕サージ、土石流、火山ガス、発泡現象、水蒸気爆発、マグマ水蒸気爆発、軽石、亜硫酸ガスなど、知っていた方がいい火山用語が出てくる。
 後半著者が特に力を入れているのは、ひとたび噴火が起こると火山学者はどう動くのか、行政や報道機関とどう対応していくのかなど、火山学者としての難しい立場が書かれている。これには共感できる。ハザードマップ、危機管理システム、警戒区域、自己管理、火山情報など、火山災害への備えについてもわかりやすく言及している。
 最後についているエピロークも長い。著者の主張する
「科学者はもっと謙虚になる必要がある。〈科学を教えてやる〉という明治時代の態度が、今でも残っていると思う。しかし、これとまつたく逆の態度に変わらないと、いまや誰も立ち止まってはくれない。」
には同感できる。こういう思いで書かれた本としても評価したい本である。

【早川ひろみ 20030221】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 地球が生きている事を実感する本であった。動物が呼吸し、鼓動し、排泄する。まさにそのような行為を地球が火山活動を通じ、行っているのではないかと読者に思わせる。
 日本を代表する阿蘇山、富士山、雲仙普賢岳、有珠山、三宅島の5つの火山についてその美しさや恐ろしさをはじめとする魅力がたくさんのエピソードをまじえて描かれている。筆者と火山の関わり方や時として命を落とす研究者の真摯な姿に心打たれる。
 火山の性質や災害予知等の難解な事象についても平易でおもしろい文章で書かれているのが何よりうれしい。

 お薦め度:★★★★  対象:火山についての初心者

【六車恭子 20030219】
●「火山はすごい」鎌田浩毅著、PHP新書

 いまや火山学の第一人者である著者が日本列島の火山を解説すると同時に「私は如何にして火山学者になったか」、を何の衒いもなく告白した好著。 
 添えられた美しいグラビア写真から噴火口こそ、私たちの棲む地球が生きていることを実感できる数少ない場所であり災害を最小限に食い止める研鑽の場所でもあるようだ。雲仙普賢岳、有珠山、もっとも身近には三宅島の噴火を経て人知をこえる災害を予知できるように「過去は未来を解く鍵」とする地質学や地球物理学、地球化学が連係して作業が進められている現場からの報告でもある。
 数々の災害の現場の埋もれたエピソードは人の情熱が密かに伝番していく様を伝えてドラマチックですらある。

 お薦め度:★★★  対象:この本を手にされた人ならだれでも

[トップページ][本の紹介][会合の記録]