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本の紹介「風の中のマリア」
「風の中のマリア」百田尚樹著、講談社文庫、2011年7月、ISBN978-4-06-276921-1、552円+税
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【和田岳 20120224】【公開用】
●「風の中のマリア」百田尚樹著、講談社文庫
オオスズメバチの1匹のワーカーの一生を軸に、オオスズメバチの暮らしぶりを描いた小説。主人公をはじめ昆虫たちは人の言葉をしゃべって、人間並みに思考するのだけど、擬人化は最低限に。できるだけ正確にオオスズメバチをはじめとする昆虫の生態を紹介している。
血縁選択、ハチ類の性決定システム、オオスズメバチの生活史も分かる。ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ、他のスズメバチ類との関係もわかる。なかなか盛り沢山で勉強になる一冊。小説のスタイルをとった勉強の本のような気がする。
お薦め度:★★★ 対象:昆虫の暮らしに興味のある人
【釋知恵子 20120224】
●「風の中のマリア」百田尚樹著、講談社文庫
人気作家のハチの小説と聞いて読み始めたが、イメージしていたのと違った。主人公はスズメバチの「マリア」で、飛行能力に優れ、狩りをする働きバチ。マリアと仲間たちは、言葉を話し、考え、他の生き物ともコミュニケーションするけれど、あくまでも描かれる生態はハチそのもの。働きバチとしての天寿を全うするマリアの物語だ。生態をしっかり観察して書かれた昆虫記というものでもないし、どっぷりとしたおとぎ話ということでもない。著者はどんな読者層に向けて書いたんだろう。どうしてこれを書こうと思ったんだろう。どんな気持ちになってほしくて、これを書いたんだろう。面白くなかったわけではないが、どうして?が浮かんだ。
お薦め度:★★★ 対象:う〜ん
【萩野哲 20120220】
●「風の中のマリア」百田尚樹著、講談社文庫
最強の昆虫、オオスズメバチのワーカーの“ひとり”である「マリア」を主人公にした小説であるが、「ミツバチ・マーヤ」のようないいかげんな内容ではなく、きちんと専門家の監修を経た、動物学的に正しい内容となっているようだ。オオスズメバチの一生を、ハチ類に特有の単倍数体性、ハミルトンの血縁淘汰説や、スズメバチに対するセイヨウミツバチとニホンミツバチの行動の違い、更には女王バチ殺しまで含めて盛り込んでいる。小説なので、マリアたちがかなり擬人的に描かれており、自分たちの考えをまじえたり、他の昆虫から教えられたりする場面が多く(どこまで考えて行動しているのか?他の昆虫とのコミュニケーションは取れるのか?)、純粋に動物学の勉強をしたい人にはまどろっこしいかもしれないが、マリアたちの口を借りてスズメバチの生活を解説しているのだと考えれば、十分に楽しめる一冊である。
お薦め度:★★★ 対象:動物小説が好きな人
【六車恭子 20120224】
●「風の中のマリア」百田尚樹著、講談社文庫
ひとつのオオスズメバチの帝国が「風の中のマリア」と呼ばれるワーカーの一生をおってたどるドクメンタリーたっちの物語だ。毎年秋口になるとスズメバチに襲われたという記事が新聞を載る。人類よりもはるか昔からこの世に存在し、その暮らしを確立した最強の昆虫の暮らしぶりを知る最良の読み物だろうか。たった30日の命しか与えれていないワーカーのマリアは女王バチアスリットへの献身を誓い、彼らを襲う危機を一つ一つ乗り越えて、新女王の旅立ちを見送る。そこは闘って生き抜く戦場であり、一年で完了する一族の弔いの定めを知る道程でもあったろうか。
お薦め度:★★★ 対象:蜂嫌いでも大丈夫
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