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本の紹介「経度への挑戦」
「経度への挑戦 一秒にかけた四百年」デーヴァ・ソベル著、翔泳社、1997年7月、ISBN4-88135-505-8、1400円+税
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【西村寿雄 20061207】【公開用】
●「経度への挑戦」デーヴァ・ソベル著、翔泳社
18世紀中頃までは,航行中に方向を誤って遭難する船が相次いだ。自船の経緯度が正確につかめないからだった。緯度は星の観測や羅針盤(方位磁石)でおよその見当は付く。問題は〈経度〉。海の上で〈経度を知る〉のは至難の技だ。ガリレオやニュートン,フックといった著名な科学者も加わっての天文学的手法はついに失敗。この難問を解決したのは,一時計職人ジョンハリソンの作った機械時計であった。そこへいくまでの人間ドラマも加わって興味をさそう読み物になっている。文章も流暢である。
お薦め度:★★★★ 対象:知識欲旺盛な大人のみなさん
【中条武司 20070217】
●「経度への挑戦」デーヴァ・ソベル著、翔泳社
「現在地」がわからないということだけで船や飛行機に乗って目的地に着くのがとても難しい。当たり前といえば当たり前だけど、私たちはそれを気にせず安心して乗り物で移動する。ほんの250年前までは、国の威信と命をかけて、「現在地」=「経度」を見つける挑戦がなされていた。そのために空(月)を見るか機械(時計)を見るかという相反する争点を書く本書。経度を見いだすためになされた数々の挑戦が、副次的に天文学の発展につながったというところもおもしろい。
資料の少なさのせいか筆者か訳者のせいかわからないが、いかんせん主人公になるべきハリソンの魅力があまり感じられない。科学史的に読み解くにはおもしろいけど、「本」という魅力の面ではちょっとマイナス。
お薦め度:★★★ 対象:船旅のお供に
【六車恭子 20061219】
●「経度への挑戦」デーヴァ・ソベル著、翔泳社
私たちの今の暮らしは昔の人々の血のにじむ努力の結晶に負っている!その忘れられたひとつの成果の挑戦の歴史がこの本で出会える。
大航海時代、精密な海図や羅針盤があったにもかかわらず、船が居場所を見失って、沈没し多大な損害を蒙ることが度々起こった。経度を図る手段を見つけることが、究極の課題だったようだ。イギリス王立天文台には国王の命により経度評議員会が設置され、天文学者は天体の運行で月距法を柱に精密な方位を割り出そうとした。ジョン・ハリソン(1693〜1776)という一時計職人は海上時計を作って時空の海に分け入り、彼らに参戦した。生涯に渡って5個の時計を作って改良を重ね、時間によって地球上の点と点を結ぶことに成功したのだ。彼の仕事を容認しようとしない歴代の天文台長との軋轢、不当に扱われた彼の時計を後に甦らせた人などなど、抑制された筆致で最後まで興味は尽きない。
お薦め度:★★★ 対象:古の人々の挑戦を血となし肉となす機会を欲している人々に
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