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本の紹介「形態の生命誌」
「形態の生命誌 なぜ生物にカタチがあるのか」長沼毅著、新潮選書、2011年7月、ISBN978-4-10-603683-5、1200円+税
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【萩野哲 20111027】【公開用】
●「形態の生命誌」長沼毅著、新潮選書
生物の形態をみていると、どうも何らかのパターンがあるようにみえる。今持っている形は進化による淘汰の結果なのか、物理、化学的な必然なのか。著者は生命の基本単位たる細胞骨格(アクチンフィラメント)や形の共通性や普遍性を説明するL-システムなどを紹介し、カタチの成り立ちを探る。成長と繁殖が分業した多細胞生物では様々な器官に属する細胞・組織が別々のリズムで個体発生をきざみ、生物種の系統発生を発現している。これらの世代間の継承が変化することで進化が誘導される。生命の形をモノとして見るよりコトとして見る著者のこだわりで表現された形態の生命誌をごらんあれ。
お薦め度:★★★ 対象:生物の形態とは何か、考え直したい人
【和田岳 20120628】
●「形態の生命誌」長沼毅著、新潮選書
イントロによると、これまで生き物のカタチに興味がなかった生物学者が、”カタチ”の本質と価値を見つけようとした奮戦記。メタバイオロジーの観点で生物のカタチを鑑賞し、あれこれ考えを巡らした一冊。
体制、細胞、口、植物のカタチについて進化の過程から考えてみたと思ったら、黄金比の話がはじまる。簡単なルールで複雑なカタチができあがる例として、L-システム、チューリング・パターンの紹介には力が入る。そして散逸構造の話。と思ったら、カメの甲羅、昆虫の翅の話。
全12回の連載をまとめたものなので、話題はけっこうバラバラ。読み通す本というより、面白そうなところを拾い読みしたらいい本。
お薦め度:★★ 対象:形態学関連のメジャーなトピックを軽く拾いたい人
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