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本の紹介「菌は語る」

「菌は語る ミクロの開拓者たちの生きざまと知性」星野保著、春秋社、2019年8月、ISBN978-4-39342135-2、1800円+税

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【森住奈穂 20200219】【公開用】
●「菌は語る」星野保著、春秋社

 前著『菌世界紀行』では主観を熱く語る余り、肝心の学術的記述が5分の1に終わってしまった著者。満を持して大大大好きなマイナー菌、雪腐病菌を紹介する。雪の下で活動し植物を枯らす微生物、雪腐病菌。その種類、生息地、性質、人との関わりの歴史まで、確かに雪腐を網羅した内容。なのだけど、専門的な記述のうちにも顔を出さずにはいられない主観。本文もさることながら本文下の注釈がまた細かい。そして、かなり脱線している。そのため内容が頭に入りにくい…。付録の菌リンガル(菌語翻訳装置=菌正解機構)部分は気軽に読めて楽しいのだけど。

 お薦め度:★★★  対象:奥深い菌世界の一端に触れてみたいひと
【冨永則子 20191127】
●「菌は語る」星野保著、春秋社

 冬…寒冷地では深い雪に覆われ、見渡す限り真っ白な世界になる。そんな景色は実際に一度も目にしたことはないが、何も無いように思われる冷たい雪の下にも生物は存在する。しかも、それらの生物は寒冷地だからこそ生存し繁殖している。それら“雪腐病菌”と言われる菌類を他の微生物と比較解説し、どのように寒冷地に適応してきたかを説明していく。しかし!脚注が多い!多い上に注釈引用が長いので本文に追いついていない。注釈を読むためにページを探し、また本文に戻るという行為を強いられる。長いと思えば読み飛ばしてくれていいと著者本人の弁があるが、長いかどうか不要かどうかなどは読まなければ分からない。本著の巻末に付録として著者と菌類との仮想対話がインタビュー形式で掲載されている。要はこれを本にしたかったのだろう。付録1を読めば本著で長々と解説されていることが端的にまとめられている。菌類を擬人化したり、妙に砕けた文体にしたり…いったい何がしたいのか… 付録2で本著の特徴がよく分かる。切手収集や古文書の解読など良い趣味をお持ちなのに…。

 お薦め度:★★  対象:微生物、菌類に興味のある方に
【和田岳 20191220】
●「菌は語る」星野保著、春秋社

 『菌世界紀行』の著者が今度は、真面目(?)にガマノホタケや雪腐病菌を紹介した一冊。『菌世界紀行』を読んだ人の「雪腐病菌を巡る学術的な記述か少ないとの、もっともな意見はひどく堪えた」らしい。だからこの本では、酒を飲んだくれているような話はあまり出てこない。つまらない。
 ドメインという最上位の生物の分類単位の話から始まって、菌と呼ばれるグループの多様さが紹介された後は、ひたすら寒さと生きる菌類の話が続く。競争者の少ない寒い環境、それでいて寒すぎず安定した雪の下は、意外と狙い目の環境だった。というのは判るんだけど、馴染みのない寒さと生きる菌類(たいていは和名もない)が、いろいろ出てきて、どれがどれやら判らない。
 オフザケ多めの文章で、ところどころにマンガへの言及がある。この世代の研究者の本にちょくちょくあるパターン。「ゴールデンカムイ」「天才柳沢教授の生活」「ワンパンマン」を予習しておけば、より一層理解が進む???

 お薦め度:★★  対象:菌類の多様性と、雪の下での生き物の暮らしに興味があれば
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