友の会読書サークルBooks
本の紹介「菌類が世界を救う」
「菌類が世界を救う キノコ・カビ・酵母たちの脅威の能力」マーリン・シェルドレイク著、河出書房新社、2022年1月、ISBN978-4-309-25439-5、2900円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@mus-nh.city.osaka.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]
【和田岳 20230222】【公開用】
●「菌類が世界を救う」マーリン・シェルドレイク著、河出書房新社
帯には“「生命」の常識が覆される!”とある。またまた大げさな、と思ったけど、大げさでは無かった。菌類や植物を見る目が変わる。
大きく広がっても、情報をやりとりして協調行動をする菌糸体ネットワークか。植物同士が共有菌根菌でつながったウッド・ワイド・ウェブ。こうしたネットワークは、脳やコンピュータと、どこまで同じなのか?
藻類と菌類の共生体である地衣類は、地表の8%を覆い、さまざまな極限環境に進出している。植物(藻類)は、菌類と共生して初めて、陸上に進出できた。菌根が最初にあり、あとから根が進化した。そして、菌根菌は、植物を通じて地球環境を変え、植物の味わいも変える。菌類こそが地球の主役。
まるでSFを読んでいるような楽しさにあふれた一冊。
お薦め度:★★★★ 対象:自然に興味があれば
【里井敬 20221219】
●「菌類が世界を救う」マーリン・シェルドレイク著、河出書房新社
動物でも植物でもない菌類は90%の種類は未確認。最大のオニタケは数百トン、10平方km、2000〜8000歳とされる。
光合成ができない菌類は植物から糖を得て、養分を植物に与えている。そもそも水中で発生した藻類は菌類の助けを借りて陸上に進出した。地中の菌類のネットワークはお互いの物質のやりとりだけでなく、森の中の樹と樹の間の資源のやりとりによる助け合いまで担っている。
菌類は動物とも植物とも共生している。巣の中で菌類を育てるハキリアリは菌類を飼い慣らしたのか、菌類がハキリアリを飼い慣らしたのか。
菌類は化学物質を分泌し、動物を支配することもある。タイワンアリタケはオオアリを植物の頂上に導きそこでキノコを生やす。マジックマッシュルームは食べた人に幻覚作用をもたらす。ヒトも胞子拡散のために働かされているのか。
菌類は有機物を分解する。ゴミを宝に変えてくれる。放射性粒子まで食べてくれる。食べたことのないたばこの吸い殻や除草剤まで分解することを学習する。分解者だけでなく、新素材や燃料を作り出す創造者の面もある。菌類のゲノムにはいっぱい休眠している部分があるらしい。
菌類は生物の世界を作ってきただけでなく、自分が生き残るための戦略なんやろうけど、タイトル通り世界を救う?
お薦め度:★★★★ 対象:知らなかった菌類の世界を知りたい人
【萩野哲 20221212】
●「菌類が世界を救う」マーリン・シェルドレイク著、河出書房新社
菌類、その得体が知れない生物を、本書は8章で紹介する。トリュフなど魅惑的なキノコ、粘菌などの知性をもった菌糸ネットワーク、地衣類などの共生(分岐ではなく合体)の創出、宿主を操り意識を変える化学物質を生産するゾンビ菌やマジックマッシュルーム、植物の根を機能的にした菌根菌、菌と植物のみならず害虫やその天敵とも関係するWWW、ゴミを宝物に変え環境を除染するラジカル菌類。好き嫌いはともかく、菌類の話題は菌糸のネットワークなみに広がる。どの章も驚きの連続だ!しかし、菌類は今まで疎かにされてきた。神は菌類の力を借りて世界を創造したのかもしれないのに。
お薦め度:★★★★ 対象:今まで菌類を軽視していた人、または、まだ菌類に感染していない人
【西本由佳 20221218】
●「菌類が世界を救う」マーリン・シェルドレイク著、河出書房新社
菌類は菌糸をのばしてたくさんのネットワークをつくっている。菌類に脳とよばれる器官はないけれど、菌糸は「知性」があるような行動をとることもある。菌類ももちろん食事をするから、ある生きものに対しては敵対的にふるまうけれど、相手によっては「共生」といえるふるまいもする。例えば植物には根の延長となって養分を運んだり、藻類と一緒に地衣類というかたちをとったりする。岩石を土壌に変え、糖類からアルコールをつくる。ヒトは菌類からたくさんの恩恵を受けている。ハチの蜂群崩壊症候群のワクチンがうまくいってほしいなと思う。
お薦め度:★★★ 対象:キノコの新たな一面を知りたいなら
[トップページ][本の紹介][会合の記録]