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本の紹介「キリン解剖記」

「キリン解剖記」郡司芽久著、ナツメ社、2019年8月、ISBN978-4-8163-6679-6、1200円+税

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【萩野哲 20190920】【公開用】
●「キリン解剖記」郡司芽久著、ナツメ社

 子供の頃からキリン大好きな著者がキリン研究者になり、8番目の首の骨を発見!?結論として、それは構造的には第1胸椎だが、機能的には8 番目の頸椎として働いていたのだ。これで50cm 以上も首の可動範囲が広がり、高い場所の葉を食べることができるとともに、低い場所の水を飲むことも容易となる。頸椎のように動いていることを証明するためにはこの骨に付いている筋肉の構造を詳しく調べなければならなかったが、キリンのような大きくて長い動物では、頸と胴体がちょうど必要な部分で断ち切られていることが多く、正に研究の“ネック”になっていた。このような大きな動物でも、解剖には小さなメスを用いているのに少し驚いたが、繊細な研究には必要なのだろう。平易な文章で、研究の経緯を筋立ててまとめており、必要な解剖用語や周辺情報も適宜図を入れて説明されており、大変読みやすく理解しやすい。今では 4種に細分されているキリン全てで結論が同じか、少し気になった。

 お薦め度:★★★★  対象:読んでよかったと思う本を読みたい人
【西本由佳 20191020】
●「キリン解剖記」郡司芽久著、ナツメ社

 キリンがこどもの頃から好きだった著者が、キリンの解剖に取り組み、8つ目の首の骨を見つけるまでの道のりが書かれている。それは同時に、著者が解剖の経験を積み、研究者となっていく道のりでもある。著者はキリンの献体に向き合い、解剖したキリンを生きていた時の愛称で記憶し、大事にされていたキリンの体を無駄にしないよう、懸命に解剖に取り組む。解剖というと怖いイメージがあったが、そう思うことは献体に対して失礼だと気付かされた。生きていたものに対する真摯な向き合い方が印象に残った。

 お薦め度:★★★★  対象:解剖って怖そうと思う人にも
【森住奈穂 20191024】
●「キリン解剖記」郡司芽久著、ナツメ社

 キリンといえば長〜い首。哺乳類には首の骨数は7つという基本ルールがあり、「キリンもヒトも同じ」という常識を覆した著者の成長物語。幼い頃からキリンが大好きで、18歳で研究者を志し、解剖を学んで「キリンの8番目の首の骨=vを発見、博士号を取得するまでが綴られる。イラストが補ってくれるので分かりやすいはずだけど、骨の名前や構造に馴染みのない私には少々難しいところもあった。ちなみにキリンの角は皮膚の中に骨が形成される「皮骨」という構造で、アルマジロの甲羅やワニの背中の凸凹と一緒らしい。キリンて、いろいろ変わった生きものなんだなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:解剖学者のできるまで、を知りたいひと
【和田岳 20191008】
●「キリン解剖記」郡司芽久著、ナツメ社

 新進気鋭の解剖学者、というかキリンの形態の研究者である著者が、キリン研究者への道を振り返るとともに、キリンの第1胸椎の謎を解明する物語。
 大学に入って、たまたま解剖男さんと出会って、小さい頃から好きだったキリンの研究者への道を歩み出す。最初は、まともに解剖が出来ていなかったのが、経験とともに出来るようになって、第1胸椎という解明すべき謎に出会う。キリンとオカピを比較しつつ、形、腕神経叢、肋骨の付き方などから、キリンの第1胸椎の特殊性を明らかにしていく。1つのテーマを徐々に明らかにしていくからとても判りやすいし、読みやすい。解剖学を志す人にはとても参考になりそう。
 著者は、今までに30頭のキリンを解剖・解体してきたという。キリンが死んだと聞いたら、いつでもどこにでも駆けつけるらしい。キリンの飼育担当者から死に神と言われないかと密かに危惧したけど、そこは著者の人柄なんだろう。

 お薦め度:★★★  対象:キリン研究者の育て方を知りたい人
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