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本の紹介「キリンの保育園」
「キリンの保育園 タンザニアでみつめた彼らの子育て」齋藤美保著、京都大学学術出版会、2021年6月、ISBN978-4-8140-0333-4、2200円+税
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【里井敬 20240626】【公開用】
●「キリンの保育園」齋藤美保著、京都大学学術出版会
車で調査する人が多いタンザニアのフィールドを徒歩でキリンを追いかけて調べた記録。キリンのメスは仔を産むと、数匹の母親が群れを作って子育てをする。保育園と呼んでいるが、見守り役も決まっていないし仔を置いて長時間餌を食べにでかけてしまう者もいるゆる~い保育園だ。しかし、隠れる所の多いミオンボ林を選んでいたり、キリンには害を与えない人々の住居の近くであったり、年少の仔の母親はあまり長時間子どもたちから離れなかったり、安全は確保しているようだ。徒歩で回るのでデータ数は少ないが、じっくり観察できる。野生ではもらい乳はないと言われていたが、見ることができどんな条件の時かも観察できた。狭い範囲の調査なので同じ個体の成長を見ることもできた。タンザニアに生息するマサイキリンは絶滅危惧種になっているが、単に保護するだけではなく、現地に暮らす貧しい人々にも寄り添っていく必要がある。
お薦め度:★★★ 対象:アフリカの野生キリンのことが知りたい人
【森住奈穂 20240628】【公開用】
●「キリンの保育園」齋藤美保著、京都大学学術出版会
薮に潜む、かも知れないライオンやカバに怯えながらのフィールドワーク。部屋に潜んでいた毒を飛ばすヘビにびっくり仰天したり。こうでなくっちゃ!の王道の展開。「とりあえず行ってこい」という指導教官の号令の下、大学院へ入ってすぐに5ヶ月間の現地武者修行。タンザニアの国立公園に腰を落ち着け、銃を携帯したレンジャーとペアを組み、徒歩でキリンを探し回る日々。意外にもキリンの仔育て研究はほとんど行われてこなかったそう。確かに知らないことばかり。2、3ペアの親子が集まり保育園と呼ばれる群れを作るキリンの仔育て。足かけ10年に渡る調査から見えてきた成果が紹介される。赤ちゃん特有のパイナップル角毛がとても可愛い。
お薦め度:★★★ 対象:アフリカでのフィールドワークや野生のキリンについて知りたいひと
【冨永則子 20240626】
●「キリンの保育園」齋藤美保著、京都大学学術出版会
動物、なかでも哺乳類の子育ては“哺乳”とあるように、親が子に乳を与える事が基本だ。人間のように四六時中、側に居て、子が泣いて乳を求めれば与えるという子育てもあれば、キリンは『置き去り型』の仔育てになる。ひ弱な仔を帯同して餌を探すことは非常に危険だ。捕食者に見つかれば親も仔も命の危険にさらされる。そのため、キリンは同じような仔が集まって、じっと親の帰りを待つ“保育園”をつくる。
このキリンの保育園を研究テーマにした著者が、フィールドワークの地として、アフリカのタンザニアを訪れ、何もかも手探りで“研究者”になっていく成長記録である。
同じ著者で子ども向けの読み物に「林にかくれるキリンを追う もっと知りたい野生の姿」(くもん出版 2023.8.31)がある。こちらの写真はオールカラーになっている。お世話になったレンジャーのカレラさんが亡くなったとあったが、そのカレラさんの生前の姿も見られる。
お薦め度:★★★ 対象:アフリカと野生動物に興味のある人に
【和田岳 20240627】
●「キリンの保育園」齋藤美保著、京都大学学術出版会
単身タンザニアに行って、キリンの子育てを研究する話。ドキドキのバス旅行、手間取る手続き、カバとの接近遭遇。そしてじっくり観察できないキリン。地元の人との交流とすれ違い。出だしでは、アフリカなどでの研究初期あるあるがいろいろ。
その後は、キリンの子育て研究が紹介される。保育園がある時は、キリンの子育ての様子。保育園がなければ、休息行動・休息場所・1日の過ごし方、食性。毎日キリンを観察して調査を進めていく。その合間に紹介されるキリンと人との関係、調査時に怖い動物、タンザニアの人々の子育ての様子、地元社会の変化、そしてキリンの生息環境の保全。
著者は日本で唯一の野生キリンの研究者だそう。車をはじめたくさんの機材・人材を投入する他国のチーム。それに対して、単身、車もなくローテク。その違いを活かしつつ、キリンの生態を解き明かしてきたのは、とてもかっこいい。
お薦め度:★★★ 対象:若手研究者の苦労話が好きな人、あるいはキリンやアフリカに興味のある人
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