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本の紹介「寄生虫なき病」
「寄生虫なき病」モイセズ・ベラスケス=マノフ著、文藝春秋、2014年3月、ISBN978-4-16-390035-3、2200円+税
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【六車恭子 20160226】【公開用】
●「寄生虫なき病」モイセズ・ベラスケス=マノフ著、文藝春秋
著者には長年アレルギー疾患があり、その治療の過程で図らずも巡りあった最先端の知の集積の報告にも思える。そこにはわれわれ文明人が直面している「今そこにある危機」をあぶり出すエキセントリックな著作になった!文明がはじいてきた負の遺産からの警報でもあろうか。我々がこの世界から放逐したはずのものからの報復にも思えるのだ。我々よりも先に存在し、この世界にニッチを確立したはずの細菌や寄生虫の不在が図らずも今我々の身体を蝕み様々な文明病を招いているのだろう。科学の最先端にであえると同時に日々の暮らしを足下から見直す警報の書でもある!我々の身体が超個体!地球そのもの!病んでいるこの超個体を救えるのもまた我々自身の選択にほかならないのだ!
お薦め度:★★★★ 対象:生命あるすべての人々
【萩野哲 20160225】
●「寄生虫なき病」モイセズ・ベラスケス=マノフ著、文藝春秋
著者は様々なアレルギー性疾患をかかえており、今までいろんな治療を試みたが状況は好転しなかった。その著者が次に選んだ方法は、なんと致死症例もある寄生虫を取り込むことであった。先進国ではやっと撲滅できた寄生虫なのに、なぜか? 歴史的に人類が寄生虫や感染症を撲滅すると自己免疫疾患が増加することがわかってきたからだ。まだメカニズムが解明されていないが、アレルギーで苦しむ人にとっては背は腹に変えられない。元々、寄生虫は宿主も含めた生態系を形成していたのではないか?寄生虫の撲滅は多様性を低下させていることにならないか? もしそうなら、様々な不具合が生じてもおかしくないだろう。その不具合とは、自己免疫疾患のみならず、自閉症、ガン、うつ病、老化・・・。
お薦め度:★★★ 対象:アレルギーで苦しんでいる人
【森住奈穂 20151225】
●「寄生虫なき病」モイセズ・ベラスケス=マノフ著、文藝春秋
キーワードは超個体。私たちの腸内には百兆個もの微生物が住みついており(ヒト自身の細胞数は六十兆個)、人体はそれ自体が一個の生態系を形作っている。寄生虫、細菌、ウイルス。彼ら寄生者は、人がヒトになる以前から長い進化の道をともに歩んできた。ヒトのDNAにはウイルスが取り込まれており、進化の一因となった模様が明らかになりつつある。自身が自己免疫疾患を抱える著者は、花粉症、喘息、アレルギーといった現代病は、寄生者を駆逐したことが原因なのではないかと追及を始める。膨大な研究事例に当たり、取材を敢行し、さらには自身が寄生虫感染治療を受ける。公衆衛生が向上し、寿命が延びたことは事実だが、反面それが健康を害するという事実はショッキングだ。「不在」という存在を知ることのできる一冊。
お薦め度:★★★ 対象:健康でいたい、なりたいひと
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