【西本由佳 20180422】【公開用】
●「汽水域に生きる巻貝たち」和田恵次著、東海大学出版部
汽水域は、潮の満ち干きにともなって、淡水に近くなったり、海水に近くなったりする。そんなに塩分環境が変わっても大丈夫なのかと思っていたら、やはり貝によって塩分の得意不得意があって、それに応じてどこに生息するか分かれるらしい。でも年齢によって移動があったり、同じ貝で同じ年齢でも、春と冬で上方へ移動する集団と下方へ移動する集団があったりする。殻長の分布をヒストグラムで表したものが何度か出てくるけど、繁殖期と思われる時期のあとに、小さいほう(その年生まれた子貝)と大きいほう(大人の貝)に二つの山ができて、それが季節が進むと大きいほう一つになる分布は、ほほえましい。ただ、小さいほうの山ができずに、しだいに個体数が減っていく分布もあり、生存の厳しさがうかがわれる。いま汽水域は人口改変によって減っている。汽水という環境に適応してその微細な変化に対応してきた貝たちに、他の場所はない。役に立たなくても、それが存在するということに価値を見出してもいいのではと思った。
お薦め度:★★★ 対象:干潟について勉強したい人
【和田岳 20180411】
●「汽水域に生きる巻貝たち」和田恵次著、東海大学出版部
奈良女子大のカニの大先生が、なぜか汽水域の巻き貝について書いた本。卒論生と一緒に巻き貝の調査もしてきたから、その成果を中心に保全絡めて絡めて一冊かいてみたってところ。
丸っこいタマキビ類、スガイ(+カイゴロモ)、イシマキガイ。細長いコゲツノブエ、ウミニナ類、イボウミニナ、キバウミニナ、ヘナタリとカワアイ、フトヘナタリ、タケノコカワニナ。とても小さいワカウラツボ、カワザンショウ類。干潟や汽水域の暮らしが次々と紹介される。干潟の生物観察に行った事があれば、へーそうだったのか。ってポイントがきっと出てくる。でも、自分が調べたことのある貝しか取り上げられていないので、物足りなくもある。
お薦め度:★★ 対象:干潟や汽水域の生き物に興味のある人