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本の紹介「キツネのせかい」
「野生動物学者が教える キツネのせかい」塚田英晴著、緑書房、2024年1月、ISBN978-4-89531-938-6、2200円+税
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【西本由佳 20240623】【公開用】
●「キツネのせかい」塚田英晴著、緑書房
日本でも西洋でも、物語のなかでキツネは、賢さと人になじまない野生が描かれる。しかし、近年ではそういった点がなんだか骨抜きにされていく、というのが1章。2章はキツネの世界的な分布、巣穴、1日の生活、巣立ちと分散。無事に1歳を迎えられるキツネは1割ほどだそう。3章は食べ物について。日本の場合だと、ネズミが多く、果物や昆虫もよく食べるらしい。同じような捕食者で比べると、コヨーテやヤマネコとは競争して負けるけど、オオカミは寛容で共存できるという。4章は恋と子育て、子別れ。5章のエキノコックスは、日本には元はなかったもので、持ち込んだのは人だという。6章は人とのかかわりで、獣害とロードキルと餌付けの問題。扱いにくい野生としてのキツネと、人の暮らしの被害者としてのキツネ、飼いならされかけるキツネ。いずれも、人とキツネの距離感が問題となり、近すぎるとキツネにとっては不幸だという。野生動物との適正な距離について、改めて考えさせられた。
お薦め度:★★★ 対象:野生の生きものの姿を知りたい人
【萩野哲 20240426】
●「キツネのせかい」塚田英晴著、緑書房
本書はキツネのイメージに始まり、キツネとは何か、その食性、エキノコックス、そして人との関係まで幅広い話題をとりあげている。童話に取り上げられた回数No.1であり、とても身近な動物であるキツネだが、実際に出会うことは少なく、何か得体の知れない動物として認識されてきた。身近に居ながら正体がよく判らないことから、化ける動物になってしまったのだろう。その動物の研究を、著者は30年以上も続けてきた。本書を読むと、あらためてキツネをよく知らなかったことが分かる。眼はネコと同じで瞳孔が縦長で、瞬時に光量を調節できるし、縦方向の距離を正確に測定できるらしい。嗅覚もイヌの2.8倍もよい。発情期の尿には特別なにおい物質も含まれているが、色も独特らしい。エキノコックスは今でも増加傾向にあり、本州にも飛び火している。害獣、観光ギツネ、ロードキル…。単なる知識だけではなく、人間との関係は切迫しており、解決すべき問題は山積している。
お薦め度:★★★ 対象:キツネの化けの皮をはがしてみたい人
【和田岳 20240424】
●「キツネのせかい」塚田英晴著、緑書房
キツネの研究者が、キツネについて紹介した一冊。昔話やアニメにみるキツネのイメージから始まり、キツネの分類、分布、暮らし、形態と生物学的な側面を一通り紹介してくれる。さらにエキノコックスの話、人との関係と、社会的な側面にもふれられる。
ギンギツネは知ってたけど、十字ギツネは初めて知った。ホンドギツネとキタキツネの見分け方も判る。キツネがトウモロコシ好きとは知らなかったし、あの有名な子別れの儀式の真実も書かれている。エキノコックスが外来生物であることが、ようやく理解できた。
とにかくキツネについての色んなことが一通り紹介されている。キツネについて何か調べたい時には、とても便利な一冊。
お薦め度:★★★ 対象:キツネについて知りたい人
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