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本の紹介「孤独なバッタが群れるとき」
「孤独なバッタが群れるとき サバクトビバッタの相変異と大発生」前野ウルド浩太郎著、東海大学出版会、2012年11月、ISBN978-4-00-431374-8、2000円+税
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【和田岳 20130222】【公開用】
●「孤独なバッタが群れるとき」前野ウルド浩太郎著、東海大学出版会
フィールドの生物学シリーズ第9弾。90%近くは実験室での内容。フィールドの生物学ではない。いや、実験屋にとっては実験室ことがフィールドであるという主張かな?と思ったら最後になってモーリタニアに行く。それならモーリタニアを中心に書け!
という突っ込みはさておき、どういう条件でサバクトビバッタが孤独相から群生相に変わるかを、実験室でいろいろと実験をくり返して解明していく物語。高価な機械は使わず、とにかく大量にバッタを飼育して、他に使うのはノギスと注射器とマニキュアなどなど。とにかくローテクで、中学生でも手が届きそうな実験で、次々と謎を解いていく。海外の有名な研究グループとの論争に勝つ様は格好いい。
ただ、著者も認めているように、もちろん本人も真面目にがんばったんだろうが、師匠の田中誠二大先生の偉大さが際立つ。よき師匠との出会いはとても大切なんだなぁと思わせられる。たぶん師匠にとっても可愛い愛弟子なんだろうね。というわけで、師弟愛に溢れた1冊になっている。
お薦め度:★★★★ 対象:お金を使わないでも世界的な研究が出来ると励まされたい人
【萩野哲 20130214】
●「孤独なバッタが群れるとき」前野ウルド浩太郎著、東海大学出版会
かつて突然現れ、あらゆる緑を食べつくす黒いバッタは、まさに悪魔であったろう。実は、この黒い悪魔は普通にいるバッタが相変異したものであることがわかったが、まだそのメカニズムは完全に理解されていない。本書には、ファーブルにあこがれ、プロの昆虫研究者になりたいと願っていた著者が、偶然といってもよいきっかけにより、よい師匠を得て念願を果たしていく過程が、克明に記述されている。研究対象には無限の未知の宝が埋蔵されているが、それを掘り出すためには、研究者の不断の努力と卓越したセンスが必要不可欠である。著者にはそれらが揃っていたようであり、バッタが密度を認識する刺激の特定をはじめ、短期間で華々しい成果を挙げていく。更には、著者は文才も備えているようだ。通常、目次は見ないで読み進めるが、本書ではそれぞれの章、節のタイトルの奇抜さが目に付いた。目次を眺めてみると、読者を引き付けるタイトルが並んでいるので、読者はそちらにも注目してほしい。
お薦め度:★★★★ 対象:飛蝗を知っている人その後の展開を知りたい人
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