この本は生物学者の人間心理徒然考察ノートとでも名付けるべき物です。なぜなら著者の独断から特に裏付けも取らずに心の赴くままに持論を展開して行っていると言うのが内容であるためです。生物と心が別の物であると主張しながら同一の尺度として計ろうとしているため所々強弁が過ぎるように感じられます。また、著者は人文学と自然学を融合させて心にアプローチしたいと主張しています。事実、それこそ人間心理を分析するための手法でしょう。そして、心理学とはまさにその様なアプローチをしています。ですが著者は心理学を一切参照している痕跡がありません。その為に一部は納得出来る物の全体的に古くさい偏った内容に仕上がっています。
お薦め度:★ 対象:既存の学問がお嫌いでココロを考えたい人
人は誰でも心を持っているが、その心は形も色もなく、つかみどころのない有機体である。
本書は、その心の起源をたづねるのに推論と理論を積み重ねて探検している。
生物を支配する核酸の出現による遺伝子から細胞を持った生物世界と物質世界の上に心の誕生がある。その心と心との接触から社会が出来て、その規範が生まれる。そうして心の進化する事によって愛と超越者を持つ様になった。そして人類として生きねばならないと言った哲学的な考察が必要となってくる。ただし解明されなければならない問題が残っている。
お薦め度:★★ 対象:理論的な考えを好まれる人に
この本は、生物学で経験的に得た知見をもとに「心とは何か」を推測している。著者は心理学について半端にしか知らないらしく、心理学を専攻している私が読むとケンカを売られている気分になる。生物学と言いながら、内容は哲学。表現が抽象的でわかりにくい上、共感的にも理論的にも納得しにくい。無駄な人物ノートとやらを載せて、引用・参考文献が載っていないのも不親切。本文を読むと憤りを感じるが、何故か章のまとめはまともに読めるので、もし読むのであれば章のまとめだけをオススメする。
お薦め度:★ 対象:心に興味があるが心理学という学問体系は無視したい人向け
心の起源には、記憶の誕生が関係していると主張する著者が、それを延々と論証したと称する本。心を問題にしながら、心理学は完全に無視する。生物学からの挑戦とあるが、それは自己増殖という生物の特徴が現れることで何が起きたかを参考に、記憶が誕生したら何が起きるかを考えるという意味らしい。いろんな生物に心があるかを検証、なんてことはまったくしない。
心の問題は生命現象に還元され、生命現象はさらに物質に還元されるのだろうか、てな枝葉の議論には熱心だが、心の起源を記憶に求められるのかといった肝心の議論があいまい。ぜんぶ読んでも得るところはないので、読むのは時間の無駄。イライラするだけ損。
お薦め度:★ 対象:他人の論点のあら探しが好きな暇な人