【萩野哲 20171010】【公開用】
●「昆虫こわい」丸山宗利著、幻冬舎新書
個人的に次はどんな本を出されるのかと期待している著者の最新書。今回は最近の海外遠征の記録である。ペルー、カメルーン、カンボジア、フランス領ギアナなど、世界中を股にかけて昆虫採集しまくった10章から構成されている。著者の専門の好蟻性アリ型ハネカクシやツノゼミのみならず、巨大甲虫などを採集した時の感動が共有される内容となっており、一気に読了してしまった。生物界最大の大所帯で、実際に存在する1/10も記載されていないと言われ、ましてや生態について解明されている種はさらに少ない昆虫の中で、あまり研究されていなかった分野である好蟻性昆虫という、いわば“金の卵”を得た著者が語る昆虫の魅力と、著者の昆虫を発見、採集、研究したいとのエネルギー満載で、すばらしい内容となっている(ベタほめ)。昆虫大好きが高じて、眠れない、自分の糞を採集用の餌にとっておく、Gがいっぱいのトイレでも平気になるなど、昆虫のこわさがよく理解できる。もちろん研究面で、アリ型ハネカクシが何回もいろんな系統で独立に進化したという教科書級の成果が上がっていることにも触れられている。
「昆虫こわい」というタイトルは落語の「饅頭こわい」をもじったものであるが、本当は昆虫大好きな人の書いた本のタイトルとしては秀逸。なお、著者のような専門家でも、他人よりちょっとでも大きな虫を採って喜んでいるのを知って、自分のような初心者なら当然だと、少し安心した。
お薦め度:★★★★ 対象:とにかく昆虫が好きな全ての人。ほんとうに「昆虫がこわい」人には?
【森住奈穂 20171020】
●「昆虫こわい」丸山宗利著、幻冬舎新書
落語の「まんじゅうこわい」をもじったタイトル「昆虫こわい」。内容は、昆虫を愛しすぎてこわい著者の海外調査譚10章。人里離れた調査地まで何日もかけて赴き、ときにはジャングルで道に迷い、ときにはツェツェバエ(死の病を媒介)に襲われ、ときには道路を逆走または爆走して交通事故の恐怖におびえる。目当ての昆虫を見つけた時には、「ぎゃああああーーー!!!アッタプセニウス!!!!」など奇声をあげ、そのうちに昂ぶりがたたって不眠症となり心療内科の扉をたたく。昆虫学者の生きざまに、こちらの胸も熱くなる。オールカラーで写真が素晴らしく美しい。新書のため気軽に手軽に読める。のだけれど、私には物足りない。本書の結びは「さてこのへんで、「次の大発見がこわい」。」。大発見のあかつきには、ぜひ単行本をお願いします!
お薦め度:★★★ 対象:昆虫こわくないひと
【和田岳 20171019】
●「昆虫こわい」丸山宗利著、幻冬舎新書
アリの巣の共生甲虫やツノゼミの研究で知られる著者が、世界各地に昆虫採集に出かけた話を一挙に放出。旅行記であり昆虫採集記。こんなん採れた嬉しかった〜。って話が並ぶ。ペルー、カメルーン、カンボジア、ミャンマー、ケニア、フランス領ギアナと、本当に世界の低緯度地域に行きまくっている。荷物盗られそうになったり、賄賂取られたり、せっかく採集した標本が日本に届かなかったり、いろんな目に遭ってるけど、本当に危ない目にはあってないし、全体的にとても楽しそう。
あまりに楽しそうに見える、と本人も自覚があるからか、随所にあくまでも研究のための標本採集だと念を押してる上に、最後の番外編では「ちゃんと研究もしてますよ」と、研究紹介も付いている。
ただ、とにかく虫だらけの一冊。壁中ゴキブリだらけの便所でも平気な奴らの話。虫嫌いの人は避けた方が賢明。
お薦め度:★★★ 対象:昆虫好き、フィールド好き