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本の紹介「凍った地球」

「凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語」田近英一著、新潮社、2009年1月、ISBN978-4-10-603625-5、1100円+税


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【西村寿雄 20090609】【公開用】
●「凍った地球」田近英一著、新潮社

 最近、「スノーボールアース」という言葉をしばしば耳にするようになった。過去に地球全体がまるごと氷に被われる氷河期があったという仮説である。それが一度ならず、二度もあったとか。生命が生まれたと言われる顕生代(5億5千万年前)以前のできごとである。まだまだ仮説の段階であるとはいうものの、地球上の各所に氷河時代を証明する観測証拠が見つかっている。この本の良さは、仮説に対する反論も次々と紹介していることにある。
 読者も、予想や疑問をいだきながら読み進めていくことができる。ウェーゲナー以来の「地球革命」が起きるのか、興味津々の物語である。

 お薦め度:★★★  対象:地球にロマンを求めている人

【太田行二 20090612】
●「凍った地球」田近英一著、新潮社

 約22億年前に、地球上にシアノバクテリアが出現した。そして、シアノバクテリアが大繁殖することで、大量に光合成をしたので、二酸化炭素が減り、地球の温室効果が低下して、気温が下がり、地球が全球凍結=スノーボールアースになったそうだ。また、約6億年前に、真核藻類が出現した。この時も、真核藻類が大量に二酸化炭素を消費して、2度の全球凍結をしてしまったそうだ。ところで、火山の大爆発や、小惑星の衝突などで、環境が大変化することで、生物が絶滅など大きな影響を被る事があった。そして、上記の様に、逆に、生物が大量に光合成することで、全球凍結してしまったように、生物の繁殖が環境を大きく変えることもあったのだ。結局、生物も地球環境の一部であり、地球のシステムと捉えるべきではないか。まだ地球の全球凍結は、新しい地球史観でしかないが、全球凍結することで、多くの生物の絶滅を招くと共に、生物の入れ替えをした、地球にとって本質的なものと考えるべきかもしれない。

 お薦め度:★★★★  対象:知って、凍れるような興奮を味わいたい人

【中条武司 20090610】
●「凍った地球」田近英一著、新潮社

 地球を地球たらしめているのは液体の水。それが過去にはすべて氷になっていた時代があるという。しかもそれは1回だけでなく、複数回起こっていたことがわかってきた。この10年で急速に進んできたスノーボールアース仮説が、どのような過程で解明されてきたか、そして研究者はどのような議論を行ってきたかがわかりやすく解説されている。特に自説を主張するために、世界中の関連研究者に別刷りを送りまくった(と思われる)ポール・ホフマン博士のパワーには感心させられる。
 いかんせん、図がやや少ない。文章で理解はできるものの、優しい図でももっと付けてくれたら、さらに理解が深まると思う。

 お薦め度:★★★  対象:最新の地球史研究の鼓動に触れたい人

【萩野哲 20090619】
●「凍った地球」田近英一著、新潮社

 地球の気候状態は、一気に凍り、一気に融けるように、劇的に変化してきたらしい。本書は、まずホフマン教授らが発見した「スノーボールアース」の証拠発見の話を興味深く語り、次に理論的モデル、すなわち、気候状態を決める3つの要素=@太陽からのエネルギー、A惑星アルベド、B大気の温室効果の状態を「エネルギーバランス気候モデル」を使って調べると、地球が取り得る気候状態が予測可能となることをわかりやすく説明している。長い地球の歴史を想像する楽しさが伝わってくる本である。

 お薦め度:★★★  対象:地球の歴史が知りたい人

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