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本の紹介「古生物学者、妖怪を掘る」

「古生物学者、妖怪を掘る 鵺の正体、鬼の真実」荻野慎諧著、NHK出版新書、2018年7月、ISBN978-4-14-088556-7、780円+税


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【萩野哲 20181017】【公開用】
●「古生物学者、妖怪を掘る」荻野慎諧著、NHK出版新書

 書名を見て、過去に化石等として出てきて保管されてきた、あるいは古文書に記されている正体不明の物体は何であるか、古生物学的観点から・体系的・網羅的に解明する内容かと想像した。がしかし、章立てを見ると全く異なることがわかる。また、それぞれの章でも、著者の教養の深さからだろうか、脱線が非常に多い。よって、全体的なまとまりをあまり感じることができなかった。ただし、ゾウの頭骨をみて一つ目小僧を連想した等、ほどそうかもしれないと感じた部分は多かった。

 お薦め度:★★  対象:妖怪好きの人
【西本由佳 20181019】
●「古生物学者、妖怪を掘る」荻野慎諧著、NHK出版新書

 竜や大蛇は水害の象徴とされることが多い。しかし、8つずつの頭と尾が16方向に延び、赤々とした目を持つといわれるヤマタノオロチは、その特徴から、火山の噴火の描写ではないかとの説が紹介される。著者は文献の記録のなかから、具体的な観察に基づくと思われる記録を検証し、「怪」とされたそれらにどういう生物や現象があてはまるかを考える。鵺の正体は、里に下りてきて帰り道のわからなくなった獣で、それが夜な夜な心細く仲間に呼びかけていたのでは、という。妖怪が現れて退治しました、という話のなかにこんなかわいそうな例が含まれているとしたら、単純にめでたしめでたしと言えないかもしれない。

 お薦め度:★★★  対象:未知の生物や現象に好奇心をもつ人
【和田岳 20180930】
●「古生物学者、妖怪を掘る」荻野慎諧著、NHK出版新書

 食肉類化石の専門家が、文献に出てくる妖怪や異獣の正体を推理する。取り上げられるのは、鬼から始まって、鵺、一つ目、雷獣、猿手狸、シイ、一つ目髑髏、野茂利、異鳥・青嶋鳥、石羊。なぜか人魚と河童はあまり出てこない。正体の推理に絡めて、角のある動物、レッサーパンダ類、ゾウ化石、クジラ化石、イタチ科などが解説される。
 著者曰く、「本書で述べる解釈が絶対的に正しいと私自身が考えているわけではない」「全く異なる解釈が多く出てきて喧々諤々の論争が生まれることこそが本望」。と言う訳で、是非論争に参加してみよう〜。

 お薦め度:★★  対象:妖怪や異獣に興味がある人
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