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本の紹介「黄砂」
「黄砂 その謎を追う」岩坂泰信著、紀伊国屋書店、2006年3月、ISBN4-314-01002-9、1800円+税
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【村山涼二 20070419】【公開用】
●「黄砂」岩坂泰信著、紀伊国屋書店
毎年やってくる春の風物詩「黄砂」はどこで発生しやってくるのか?中国の昆崙山脈、天山山脈に囲まれた広大なタクラマカン砂漠や、ゴビ砂漠、黄土高原等で、気温上昇、上昇気流、山谷風で舞い上がり、偏西風に乗って、中国の東北部、韓国、日本を通り、太平洋、アメリカ、カナダより、グリーンランドまで達するという。その被害は、中国では、人、家畜(牛や羊)の死亡、航空路の運行障害、韓国でも衣服の汚れ、塵肺症など健康被害、学校の休校などの被害がある。日本では車や洗濯物の汚れであるが。太平洋に降った黄砂はプランクトンの栄養塩ともなる。地球環境に対しては、太陽光を反射し寒冷化を促す。敦煌では黄砂に硫黄はないが、日本ではある。中国の工業地帯上空を黄砂が通る時、硫黄酸化物、窒素酸化物を吸収・吸着・中和し酸性雨を緩和する。黄砂研究の概要を判りやすく解説し、更に研究の必要性を述べている。地球物理学への誘いの書であろう。
お薦め度:★★★★ 対象:地球科学に関心のある中学生以上一般まで
【魚住敏治 20070425】
●「黄砂」岩坂泰信著、紀伊国屋書店
黄砂というと春先に中国方面から飛んでくる砂つぶ、そう単なる「砂つぶ」なのですが、これがなかなかの曲者なのです。
本書ではタクラマカン砂漠でいかに砂のつぶが上空までまい上がり、どのように東へ流れていくかのメカニズムから、その過程で黄砂が地表からの影響をうけ変化していく様子が環境問題もからめて述べられています。
調査現場でのふんいきや調査装置の説明、苦労談なども適宜書かれていますので『単なる砂』の研究がいかにおもしろく、大変なものであるかがよく分かります。
お薦め度:★★★ 対象:これから何か調査してみたいと思っている方
【中条武司 20070426】
●「黄砂」岩坂泰信著、紀伊国屋書店
スギ花粉症の身としては、黄砂が飛ぶ季節になると憂鬱。もっとも中国や韓国では憂鬱どころか、生活全体に関わる気象現象のよう。また、たかが砂の粒と侮るなかれ、中国から遠くグリーランドまで飛んでいったり、海まで飛んだ黄砂がプランクトンの栄養源になったり。そして黄砂にまつわるいろいろなことを解明するために、気球や飛行機ではるか上空の黄砂を捕まえたり、世界規模のプロジェクトが組まれたり。
しかし、黄砂そのものについて詳しくなれる本かといえば?主には研究にまつわるエピソードや研究とはどのように進めていくのかという面が読後の記憶に残る。研究というスリリングな知的冒険を知るにはいい本かも。
お薦め度:★★★ 対象:研究の過程を知りたい人
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