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本の紹介「クマにあったらどうするか」
「クマにあったらどうするか アイヌ民族最後の狩人 姉崎 等」姉崎等・片山龍峯著、ちくま文庫、2014年3月、ISBN978-4-480-43148-6、840円+税
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【和田岳 20240229】【公開用】
●「クマにあったらどうするか」姉崎等・片山龍峯著、ちくま文庫
姉崎等氏は、22歳から単独でクマ撃ちをはじめ、45年の間に60頭のクマを獲る。その経験を、片山氏が聞き取りまとめた記録。アイヌ民族やその狩猟文化、そして姉崎氏の経験に基づくヒグマの生態・行動についてのさまざまな情報、そして北海道の自然の変化が語られる。
第二次世界大戦前後の北海道での暮らしが、今とあまりにもかけ離れていて、物語を読んでいるよう。すごい軽装で、北海道の雪山に出かけるのに驚く。常に持ち歩く杖エキムネクワが格好いい。そして、基本的には植物食で、人間を怖がるというヒグマの姿は、かなり意外。現在の北海道の山に、かつての豊かな山林の面影がなく、ヒグマは人間の影響を強く受けた山林に適応していかざるをえないという現状が残念。
で、音などを鳴らして、クマに人間の存在を知らせて歩けば、クマの方が避けてくれるらしいのだが、もし出くわしてしまったら。とにかく逃げない。じっとして、目をそらさず、ウォーと大声を出す。もし可能なら、葉っぱの付いた枝でも、釣り竿でも、クワでも振り回す。できる気がしない…。でも逃げたら確実にやられるらしい。
お薦め度:★★★★ 対象:ヒグマはすぐに人を襲うと思ってる人
【西本由佳 20231215】
●「クマにあったらどうするか」姉崎等・片山龍峯著、ちくま文庫
この本は、アイヌ民族の狩人への聞き取りという形で、クマとのつきあい方を書いている。クマはやたら人を襲う生きものではないという。しかし、人を弱いものと認識したクマは、人を襲い駆除される。大きなクマは比較的安全だというが、それは、その大きさになるまで人に手を出さず生きてきたということだから。クマは奥山より、人里に近い山を好む。そして人工林のような恵みの少ない山には生きられない。里近くに降りてきてしまうのは避けられない。共存のためにはお互いに緊張感をもつことが必要だ。山へむやみに入りごみを捨ててくれば、人のそばに行けば食べ物があるとクマは覚えてしまう。緊張感を壊しているのは人のほうである。クマとの遭遇に対処する方法を知るのも大切だが、山をどうするか、人が自然にどう接するかということから考えないといけない。
お薦め度:★★★ 対象:クマと人の関係について考えたい人
【萩野哲 20231215】
●「クマにあったらどうするか」姉崎等・片山龍峯著、ちくま文庫
ヒグマは1990年に春クマの狩猟が禁止され、姉崎さんは実質上最後のクマ猟師となった。その貴重な体験を片山さんがあしかけ3年、6回のインタビューで聞き書きしたのが本書である。姉崎さんによると、ヒグマはヒトを得体のしれない動物として恐れている。だから、そう思わせ続けることが必要だ。万一クマに会ったら決して弱みを見せてはならない。具体的な方法はp.265にまとめられている。ヘビが嫌いらしい。クマは決してヒトの友ではなく、相互忌避的な関係が望ましい。だから、クマが人の食物に依存しないような環境を作ることが重要であるし、ヒトは食料など、クマの興味を引きそうなものを必ず持ち帰らなければならない。クマの視点に立った長年の経験が姉崎さんの発言に重みを感じさせる。クマや野生動物の習性には、ヒトの存在が大きな影響を与えていたかもしれないという意味の記述が印象に残った。
お薦め度:★★★ 対象:野山でクマに出くわす可能性がある人
【森住奈穂 20231222】
●「クマにあったらどうするか」姉崎等・片山龍峯著、ちくま文庫
アイヌ民族最後の狩人、大正12年生まれの姉崎さんが語った話を、アイヌ語研究者でもある片山さんが録音し本にまとめた聞き書きの書。元版は今から20年以上前の出版であるが、内容は全く古びていない。自然を敬い、クマを師匠と呼ぶ姉崎さん。アイヌ語でクマはキムンカムイ。キムは里山、カムイは神。クマはもともと人に近いところで暮らしていた。それならば共存するのが本来の姿。なぜできないのか、共存するためにできることとは。答えはもちろん人間の側にある。ちなみに姉崎さんは、クマの子と相撲をとっていたそうな。金太郎はノンフィクションだった〜。
お薦め度:★★★★ 対象:クマは怖いと思っているひと
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