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本の紹介「恐竜はホタルを見たか」
「恐竜はホタルを見たか 発光生物が照らす進化の謎」大場裕一著、岩波科学ライブラリー、2016年5月、ISBN978-4-00-029649-6、1300円+税
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【萩野哲 20170419】【公開用】
●「恐竜はホタルを見たか」大場裕一著、岩波科学ライブラリー
なぜ海に発光生物が多いかの疑問に答えるべく、自説のセランテラジン仮説を紹介した本である。発光の効用は威嚇、警告、誘引、照明、繁殖などいろいろあるけれど、著者の考えによればカウンターイルミネーション(腹を光らせて上からの光の背景に溶け込みシルエットを消す方法)が重要で、特に海の中深層で発達し、膨大な魚類がこれを行っているのが海に発光生物が多い理由。これらの種の共通点として、ルシフェリンの中でもセランテラジンを利用していることが挙げられる(実はルシフェリンは酸化されて発光する物質の総称であり、それを利用する生物の種によって化学的構造に共通性はない)。このセランテラジンの起源を調べてみると、中深層にたくさん生息するコペポーダが浮かび上がってきた。コペポーダが普通のアミノ酸3種からセランテラジンを合成していたことが証明された。コペポーダが合成したセランテラジンが食物連鎖によりいろんな生物の発光生物の進化を支えているのではないか? ダーウィンは自然選択説の難点として、発電魚と発光生物の進化を挙げているが、それは杞憂だった。著者もダーウィンに倣ってセランテラジン仮説の難点を挙げているが、それは杞憂に終わるのかどうか?
お薦め度:★★★★ 対象:発光生物に興味ある人必読
【上田梨紗 20170421】
●「恐竜はホタルを見たか」大場裕一著、岩波科学ライブラリー
「発光」(生物発光)とは、生体内で起こる化学反応により光が作られたもの。発光様式は、自力発光と共生発光の2つに分けることができ、共生発光には任意共生(事実婚)と絶対共生(世間一般的な理想とされる結婚)があるそうで、発光するのもいろいろ大変なんだなと感じました(共生発光における括弧書きは私の偏見です)。
ホタルは美味しくない、植物は発光しない、カウンターイルミネーション、コペポーダやチョウチンアンコウが光でエサをとる所を誰も確認できていないなど、興味深い内容でした。人間は未来も光る事はないそうで、光りたいと思ったことはないですが、なぜか残念な気持ちです。
お薦め度:★★★★ 対象:深海生物が好きな人、発光する生物に興味がある人
【森住奈穂 20170420】
●「恐竜はホタルを見たか」大場裕一著、岩波科学ライブラリー
発光生物というと、まずホタルが思い浮かぶのだが、そのほとんどは海に棲んでいるそうだ。なぜ海が発光生物であふれているのか、そもそもなぜ光るのか。わからないことがまだまだたくさんあるらしい。発光生物はとても多いのに、その研究者はとても少なく、また進化の視点での研究はほとんどなかったそうで、著者は自ら「発光生物学」と名付け取り組んでいるとのこと。生物発光は、光る生きものがそれぞれに進化させた能力であり、そのメカニズムも生物ごとに異なるそうだ。これは解明するのが大変そうだ。ただ、特別な能力に思われる発光が、わりと簡単に進化しうるらしいことは意外だった。
お薦め度:★★★ 対象:発光生物に興味のあるひと
【和田岳 20170421】
●「恐竜はホタルを見たか」大場裕一著、岩波科学ライブラリー
ホタルが光る話なんて知ってるし、などと思いながら読み始めたけど、中身とタイトルは大違い。ホタルはむしろ端役で、発光生物全体の判りやすい解説書になっていた。
第1章は「意外に少ない陸上の発光生物」。タイトル通り陸上の発光生物が意外に少ない。節足動物の一部を除くと、巻き貝とミミズなどがわずかに光るだけ。第2章は「海が発光生物であふれているのはなぜか」。光るのは、獲物をおびき寄せるだけじゃないんだね。第3章は「光るなんてことがなぜできる?」。同じルシフェリンという名前で呼ばれていても、ホタルとウミホタルではまったく違う物質とは知らなかった。第4章は「ティラノサウルスはホタルを見たか」。ルシフェリンは意外と簡単に進化しうるらしい。第5章「イクチオサウルスの巨大な眼は光るサメを見たか」は、発光生物の進化の話。発光性の微生物から物質を取り入れての自力発光へという仮説が紹介される。
知ってるようで知らない発光生物のいろいろが紹介されていて、とても面白い。
お薦め度:★★★★ 対象:生き物好きなら
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