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本の紹介「共生細菌の世界」
「共生細菌の世界 したたかで巧みな寄主操作」成田聡子著、東海大学出版会、2011年6月、ISBN978-4-486-01844-5、2000円+税
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【萩野哲 20120618】【公開用】
●「共生細菌の世界」成田聡子著、東海大学出版会
「生物はすべて利己的である。」という文章から本書は始まる。「共生」というと、お互い協力して助け合って生きているような印象があるが、本書でのこの用語の意味はやや異なり、単に複数種が同所的に生活する現象を指している。ここで取り上げられているのは、キタキチョウに共生する細菌、ボルバキアの事例である。この細菌が自己を増やす戦略は、自分を子孫に伝えてくれないオスをメスに性転換してしまう、という方法である。共生細菌が宿主のチョウの性を操り、今もその分布を拡張している・・・。最初はキタキチョウとキチョウの遺伝的分化の解明から始まった研究が思わぬ発見につながっていく過程を、研究の楽しみ、苦しみをまじえて教えてくれる。
お薦め度:★★★★ 対象:共生と性の不思議を知りたい人
【和田岳 20120628】
●「共生細菌の世界」成田聡子著、東海大学出版会
フィールドの生物学シリーズは、今のところ他のすべては、熱帯から亜熱帯のフィールドに出かけての調査シーンが入る。それがメインの事が多い。でも、これは熱帯にはいかない。主に室内で話は続く。そういう意味で毛色が違う。フィールドでのこぼれ話がない。だから書くのに苦労したんだろうなと思う。思うけど、研究室での院生の暮らしをもっと面白く紹介することもできたはず。研究の紹介ばかりに力点が置かれて、研究者の暮らしがあまり見えないのは、著者の力量かと。帯にある「やる気のない学生が研究者に」というのが、本文中でも何度も出てくる。かなり飽きる。
研究内容は、昆虫(キチョウとキタキチョウ)の体内共生細菌ボルバキアの関係を調べたもの。共生細菌が宿主を性転換させたりしたい放題。我々も細菌に操られてるのかなぁ、と思わせられる。
お薦め度:★★ 対象:昆虫の共生細菌の重要性を知らない人
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