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本の紹介「共生する生きものたち」

「共生する生きものたち クロシジミとクロオオアリの相利共生」蛭川憲男著、ほおずき書籍、2008年12月、ISBN978-4-434-12278-1、1500円+税


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【六車恭子 20100423】
●「共生する生きものたち」蛭川憲男著、ほおずき書籍

 「里山から高原、山地の自然」シリーズ第2弾としてだされた写真絵本である。長野の木曽や安曇野の自然をフィールドにする著者の失われようとする命の不思議を見つめる貴重な記録になっている。クロシジミの幼虫は卵から孵化するとクロオオアリが乳母をひきうける。口移しで餌を与え続け、幼虫が蜜を分泌し始めると、彼らの巣穴に運び、まるで貴人のようにもてなす。クロシジミは彼らに密の御前を提供して報いるのだ。
 しかし彼らの生育地が今や失われようとしているのだ。明るい草原や畑地の周辺、疎林や雑木林野周辺にショベルカーが入り、コンクリートで固められ、道路や民家や消防署に改変されて行くのだ。クロシジミとクロオオアリが演じる相利共生という素晴らしい絆を断つのが人の営みという皮肉を深く思わずにはおれません。

 お薦め度:★★★★  対象:大人も子どもも

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