著者は、地球上の生命とその進化について、「連続細胞内共生説」を中心にした革新的生命観を論じている。
すべての現生生物は、共通の祖先であった細胞から30億年を超える進化を生き抜いてきた。細胞内共生が、微少共生複合体を確立し、新しい種を生んできたと説く。著者によれば、進化の大半は共生から直接生じ、いまも生じている。今日では、菌根において、はっきりとした共生構造を見いだすことができる。現生の植物で90%が菌根共生体である。
元気な女性科学者の、他の学者と出会い、議論、研究を通して、共生説に基づく進化論について興味深く読むことができた。
「いつも遠い過去にあったはじまりについてあれこれ考えていた」若いマーギュリスが夢中になって打ち立てた「連続細胞内共生説」も今では一つの学説として揺るぎないポストが獲得できたようだ。この本は彼女の共生説の背景を知る普及版の趣がある。生物の来歴を述べる系統樹、「五界をあらわす手」の模式図がユニークだ。「生物は生命現象全体をもとにして分類されるべきだ」という信念から、分類体系は情報検索システムでなければならない、と考えた。生命の起源は植物でも動物でもない細菌(原核生物)から始まったという層、共生発生によって進化したプロトクチスト(真核生物)の層、そのベースから菌類、植物、動物の三層が枝別れする。
ガイア理論は地球は生態系のネットワークであり、ガイアの持つ化学システムがどのくらい密に結合し、環境と生命体が結びつき共進化している絶えまのない相互作用の総和を測るシステムでもある。
細胞内共生による進化でよく知られたマーギュリスが、自らの生い立ちを交えながら、好きなことを書いた本。原核生物から現生生物あたりの生物の分類や進化について、多くふれられている。細胞内共生とガイアという二つのアイデアを関連づけようとする意図もあるらしい。
ガイア仮説に関しては、”多くの人が主張しているような「地球は一個の生物である」という考えではない”として、その歴史を含めてわかりやすく解説してある。もっとも、なぜガイア仮説が必要かはわからないが。
お薦め度:★★ 対象: