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本の紹介「MAKINO」
「MAKINO」高知新聞社編、北隆館、2014年2月、ISBN978-4-8326-0979-2、2200円+税
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【六車恭子 20140821】【公開用】
●「MAKINO」高知新聞社編、北隆館
黎明期の日本の植物分類学に華々しい足跡を残した牧野富太郎の評伝である。2012年に地元高知新聞で連載された「生誕150年 牧野富太郎を歩く」の記念出版だ。
南国高知の一地方の植物の記載に端を発し、日本の植物を分類記載する!という野望に生涯を投じた。牧野の80年近い年月の汗と猛進する情熱と緻密な手作業の集積が累々と残された。「牧野植物図鑑」は未だに植物学のバイブルである。自ら各地を訪ねて集めに集めた標本40万点、研究資金の借金も積もり積もってうん億円、取り立てに追われて引っ越し30回以上、生まれた子どもは13人、草木を枕に名づけた植物が1500。華やかな経歴の裏に隠されたエピソードも事欠かない。好きを真正直に生き通した愛すべき巨人MAKINOの桁外れの生涯に出会える本だ。
お薦め度:★★★ 対象:情熱の誕生を目撃したい人
【冨永則子 20140424】
●「MAKINO」高知新聞社編、北隆館
牧野富太郎、独学孤高の植物学者。小学校中退ながら独学で分類学を学び、日本の植物分類学の礎を築いた人。自らの足で日本を巡り、日本の植物をひとつひとつ調べた。牧野の精力的な花を巡る旅は、北は北海道・利尻島から、南は鹿児島・屋久島に至る。
著者は、いくつかの評伝や小説、自叙伝を元に、牧野が歩いた地を実際に歩き、ゆかりの人たちに会って話を聞き、牧野の生涯を心身で感じて伝えようとしている。
新聞連載記事が一冊の本になったもの。新聞連載は2012年11月14日から翌年の5月27日まで70回に及ぶ。一見、お硬い内容で読みにくいかと思ったが、新聞連載記事が元になっているせいか、読み進めると一気に読了できた。
お薦め度:★★★★ 対象:牧野富太郎の名前は知っているけど、どんな人だったのか知りたい人に。明治時代の学問の世界に興味のある人に
【和田岳 20140627】
●「MAKINO」高知新聞社編、北隆館
植物研究者や植物愛好家に限らず、日本で多少でも植物に興味を持ったら、必ず出会ってしまう牧野富太郎。その生涯、人となりを紹介した本。記者が実際に牧野富太郎ゆかりの地に赴き、同じ体験をし、当時を知る人の話を聞き、過去と現在を交錯させつつ話を進めていく。赴く地は、利尻岳、屋久島、小石川、神戸、仙台、高知県と日本中に拡がる。
牧野が、日本の植物学研究に大きな足跡を残したのは間違いない。でも、私生活はめちゃめちゃ。欲しい本は何でも購入、調査のために日本中を旅行。で、実家の身代は傾けるし、借金まみれだし、それを助けてくれた恩人にも偉そうだし。講演会や採集会での評判はよかったらしいが、私生活で付き合いたいとは思えない。
牧野が生涯に残した植物標本は約40万点。それはすべて新聞紙にはさまれた状態で、マウントされていなかったという。採集データも新聞紙への走り書き。その標本整理には苦労したとのこと。ある関係者が語るこんな一節には驚いた。「牧野先生は植物を採集し、研究し、論文を書くと、後の標本はカスだというお考えのようでしたから」。自然史博物館としても付き合いにくい人だったらしい。
お薦め度:★★★ 対象:牧野富太郎って、ああ植物の偉い先生ね。って人
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