マダガスカルは6500万年ほど前、アフリカ大陸から切り離され、インド洋に向けて出航した。その島の誕生の由来が生物相の特徴を如実に物語っているらしい。ここは小さな島々に鳥たちが隔離されたことで交配不可能になり生じた「小進化」の主なメカニズムを知る、絶好の実験室なのだ。また今なお哺乳類の新種が見つかる夢の島でもある。
日本でのモズ研究の第一人者がキツツキのいないこの島でオオハシモズ科がその本来の形態や習性をかえて「適応放散」して繁栄した経緯や社会構造の解明研究に訪れた、1989.8.08から5ヶ月におよぶマダガスカルでの自然紀行文である。
かってはこの島で繁栄していた象鳥エピオルニスの復元された巨大な卵や、最小の原猿ミラーネズミキツネザルや、シファカと偶然握手した体験や、奇怪な嘴の持ち主スケトベ(ヘルメットモズ)追跡のあらましが楽しく盛り込まれている。
遠いマダガスカルの人や生き物がにわかに身近に感じられる入門書といえそうだ。
お薦め度:★★★ 対象:秘境といわれる世界への旅に憧れる人に