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本の紹介「南の島のよくカニ食う旧石器人」

「南の島のよくカニ食う旧石器人」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー、2019年8月、ISBN978-4-00-029687-8、1300円+税

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【中条武司 20191218】【公開用】
●「南の島のよくカニ食う旧石器人」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー

 日本の旧石器時代のイメージと言えば、毛皮を身につけた人が槍を持ってマンモスを狩る…なんだけど、そもそもマンモスも違うということはさておき、少なくとも沖縄ではモクズガニやカワニナを採って、オオウナギを釣って食べていたようだ。カフェにもなっている洞窟(サキタリ洞)の奥で、掘っても掘ってもカニとカワニナばかり出てくる地層の中から見つけた人骨や石器。そこから想像される旧石器人の生活。そして調べればさらに湧き上がる謎。現在進行形である沖縄の旧石器人の暮らしを探る研究を体感できる本である。

 お薦め度:★★★★  対象:考古学・人類学の研究の一端を知りたい人
【和田岳 20191031】
●「南の島のよくカニ食う旧石器人」藤田祐樹著、岩波科学ライブラリー

 沖縄県立博物館に勤務していた著者が、沖縄の旧石器人を求めて、2007年から9年ほどかけた発掘調査の経過と成果が紹介される。同時に日本の旧石器人についての情報も紹介されるので、縄文時代以前の日本での人々の暮らしの一端を知るのにピッタリ。
 試行錯誤しながら、次々と発見していくプロセスはわくわく読める。その成果はタイトル通り、シカやイノシシではなく、むしろカニやカワニナ、そして魚を主に食べて暮らす沖縄の旧石器人という言葉に集約される。石器や貝器の話や、当時琉球列島にいた絶滅シカ類の話も興味深い。
 秋頃にサキタリ洞にやってきてモクズガニとかを食ってたのは分かったけど、他の季節の暮らしがどうだったのか。気になって夜も眠れない。

 お薦め度:★★★  対象:旧石器時代には、格好良くシカやゾウを狩って暮らしていたと思っている人
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