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本の紹介「水資源の科学」

「水資源の科学」鹿園直建著、オーム社、2012年11月、ISBN978-4-274-21300-7、2500円+税


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【中条武司 20130823】
●「水資源の科学」鹿園直建著、オーム社

 水資源といわれれば、普通は飲み水や農工業用水を思い浮かべるが、実はそれだけにはとどまらない。温泉、地熱、そして熱水で形成される鉱床も水資源の産物ともいえる。本書は飲料水を中心に語られているものの、類書ではほとんど扱われていない温泉や鉱床などに広くページが割かれているのが特徴だ。系統的に変わる温泉成分の違いや、鉱床のでき方など、水に関わる地球化学的に興味深い内容が書かれている。
 しかし、水資源と銘打つなら世界的な水利用の問題や飲料水汚染の問題が扱われてもいいはず。また、おいしい水の話やミネラルウォーター、健康によい水の話などの部分が冗長で文章がまとめられていない。「前に書いた」「あとで説明する」がとても多くて(つまりダブった説明が繰り返されていたり、文章順が整理されていない)、読んでいていらいらする。こっちは編集者の責任か?

 お薦め度:★★  対象:科学的な面から水資源について知りたい人

【西村寿雄 20130918】
●「水資源の科学」鹿園直建著、オーム社

 私たちの日常生活に最も関係深い水資源について、地球科学的な観点からくわしく書かれている。各地の「おいしい水」や「ミネラルウォーター」などの名水についても細かく成分が紹介されているので、「水」通には必読の書であろう。
 「おいしい水と健康によい水」「特別なミネラルウォーター」「嗜好飲料水」といったことについてもくわしい。全国の「宮水」についてついつい興味がそそられる。さらに、各地の温泉水についてもくわしい。火山地帯でないところにある温泉の熱源はどこか、日本列島の特異性が浮かび上がる。
 日本は、地震、火山国であると同時に豊富な水資源の国であることを教えてくれる一冊である。字数の多いわりには読みやすい本である。

 お薦め度:★★★  対象:「おいしい水」が気になる人へ

【村山涼二 20130821】
●「水資源の科学」鹿園直建著、オーム社

 河川水、地下水の水質は、地質によって決まるが、日本の地質と水質をプレートテクトニクスの視点より評価・解説している。環境省が選んだ「名水100選」の分布を示し地質と水質を関係づけている。国内で販売されているミネラルウオーターの成分をを火成岩地域と堆積岩地域に分け比較している。「おいしい水研究会」の決めた「おいしい水の水質要件」や「健康によい水の要件」を紹介している。温泉水、地熱エネルギー資源、金属資源、金属鉱山からの河川水による環境汚染、地下水汚染、湖沼水汚染、閉鎖性海域の汚染など水環境問題にも触れている。地学専門外の商品、社会制度、歴史などの記述については誤りが散見される。

 お薦め度:★★★  対象:ミネラルウオーターと地質の関係に興味のある方

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