何年も鳥を眺めてきて、いきなり頭をガツ〜ンと殴られたような本。大和川の南、仁徳天皇陵のある「百舌鳥駅」から東に3キロメートルの位置に「大泉緑地」はあります。この都市公園を舞台に「モズの社会」のしくみを調査した2年間にわたる克明な観察記録が本書である。79年秋に始まり123巣の営巣すべてのつがいに足輪をつけて、個体識別し(どの個体も名前をもらっている!しかも由来がある!)、そして雛の誕生、その生育と巣立ちが語られる。そして春に公園から去っていったモズたちがどのように戻ってくるか、雄雌別々のなわばりからモズの嫁入りまでが面白く解説されている。小さくてもモズはれっきとした猛禽類、帰還した「ズキン雄」が元のなわばりに収まるまでに「ベンチ息子」と演じた取っ組み合いの喧嘩は、抑制のきいた儀式化された無血の闘いだったのだ!工夫された観察道具といい、公園の周囲をモズの高鳴きのテープを持ってなわばりを調べて、公園が連続した環境の一部であることを教えてくれる周到さといい、ここにはモズの総てが書かれている。
辺境の貴重な自然だけが保護に値するのではない、身近な都市公園でモズたちが繰り広げる生活も立派な貴重な自然であることを気付かせてくれる得難い本です。
お薦め度:★★★★ 対象:鳥好きはもちろん、近くに公園がある総ての人々に