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本の紹介「虫や鳥が見ている世界」
「虫や鳥が見ている世界 紫外線写真が明かす生存戦略」浅間茂著、中公新書、2019年4月、ISBN978-4-12-102539-5、1000円+税
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【和田岳 20191008】【公開用有】
●「虫や鳥が見ている世界」浅間茂著、中公新書
要は、いろんな物をカラー写真と紫外線写真で撮ってみた、という一種の写真集。けっこう多めの解説が付いてるけど、けっこう大胆発言が多い。大部分は著者の推測にすぎないので、あまり鵜呑みにはしない方がいいだろう。撮影対象は、昆虫、鳥、植物が多いけど、両生爬虫類、魚、クモなど多岐にわたる。
紫外線写真を撮影する意義は、可視光では判らなかった模様が見つかったり、差があったりしてこそ、紫外線写真の意義がある。たとえば、モンシロソウの雌雄、花のハニーガイド、カラスやスズメダイの仲間に見つかる模様など。こうした例の画像が一同に見られるので、そこを中心に見ていくといいかも。
お薦め度:★★ 対象:色んな生きものの紫外線写真が見たい人
【冨永則子 20191023】
●「虫や鳥が見ている世界」浅間茂著、中公新書
私たち哺乳類には見えないが鳥や虫その他の多くの動物は紫外線の世界を見ている。紫外線を反射したり吸収する世界がどう見えるのか、著者は自作の紫外線カメラで多くの生き物が見ているであろう世界を撮影し考察していく。紫外線はエネルギーが大きく、生物に影響を与え、波長が短いほど大きな害を及ぼす。そんなリスクのある紫外線を生き物たちは自らの生存に利用している。多くの生き物が紫外線の世界を見ていることが分かったのが1970年頃からで、鳥が紫外線を見ることができると分かったのは1990年頃からとか。つい最近のように思うが、それまではどういう理解だったのだろう? 私たち哺乳類に紫外線が見えないのは恐竜時代に夜行性だったからとあるが、それは何億年も前のことで、ずっと夜行性でもないのに、どうして見えないまま進化してきたのかな? もし私たち人間にも紫外線が見えてたら今の世界は変わっているかな? 紫外線による「紫外色」って、どんな色? ???がいっぱい浮かんでくる。
お薦め度:★★★ 対象:自分が見ているものしか信じない人に
【西村寿雄 20191022】
●「虫や鳥が見ている世界」浅間茂著、中公新書
わたしたちが、花や鳥を見て奇麗だなと思うのは人間の勝手な見方に過ぎないことがよくわかる。人間には、錐体細胞というのがあって、赤、緑、青の色が合成されて色とりどりの物の姿が目に飛び込んでくるらしい。だが、多くの動物や鳥、昆虫、魚類などはもう一つの目、紫外線を感知する目を持っている。その紫外線で物を見るとどのように見えるのか、様々な動物や鳥、昆虫、魚類などに当てはめて見ている。虫や鳥たちが、求愛や給餌に役立てているとか、捕食者から逃れる手段とか、いろいろに使っているようだ。植物も取り上げている。著者は紫外線カメラを用意して多数の動植物や鳥等がどのように物を見ているか論じている。
お薦め度:★★★ 対象:鳥、動物の見え方に興味ある人
【萩野哲 20190920】
●「虫や鳥が見ている世界」浅間茂著、中公新書
虫や鳥が見ている世界は、人間とは錘体細胞の種類が異なったり、見える波長がずれていたりして、人間とは大いに異なっていると考えられる。著者は紫外線の反射率を捉えることができる紫外線カメラを開発して様々な対象を撮影したところ、人間では単色にしか見えない部分が色分けに見える事例が多数見つかった。このことは、紫外線が見える動物では当然、これらが色分けに見える、あるいは紫外線の反射または吸収部分が強調されて見えることを意味するであろう。このような色パターンは、目立つことによって求愛や摂餌に利用されたり、捕食者に警戒を促したり、虫や鳥を誘ったりしているのではないか?で、挙げられた事例の中には尤もらしいものもあるが、現時点ではかなり想像たくましい事例も多いように思い、マユツバ感が残った。実際にどのように見えているのだろうか?人間が想像するような生存戦略があるのだろうか?今後のスマートな検証を待つ必要があるだろう。ゆえに本書のタイトルはいかがなものか?
ちなみに、第3章図10-1,2はネオンテトラではなく、カーディナルテトラである。
お薦め度:★★ 対象:いろんな対象が紫外線を反射するのか吸収するのか知りたい人
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