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本の紹介「南海トラフ地震の真実」

「南海トラフ地震の真実」小沢慧一著、中日新聞東京本社、2023年8月、ISBN978-4-8083-1088-2、1500円+税


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【中条武司 20250424】【公開用】
●「南海トラフ地震の真実」小沢慧一著、中日新聞東京本社

 長年、活断層・プレート境界に限らず地震の発生確率が公表されてきたが、この数十年で多くの死者が出ている地震はすべて確率の低いところだ。80%にもなる地震発生確率の南海トラフ地震のこの確率はどのように出されているのか。著者は地震調査研究推進本部の議事録を手に入れ、さらには地震予測の元となった古文書までたどり、その確率算定に疑問を投げかける。その過程が熱く(暑苦しく?)語られる。確かにその確率の出し方は疑問に思うし、確率自体にあまり意味がないと思うけど、じゃあソフト・ハードとも地震そのものに対して私たちはどうするのかというところまで踏み込んでほしかった。そうじゃないと、こんな確率高くないよという主張だけが取り上げられ、逆説的に地震は来ないと読者は思ってしまうのではないだろうか。

 お薦め度:★★  対象:時々ニュースに話題になる地震発生確率とは何かが知りたい人
【萩野哲 20250415】
●「南海トラフ地震の真実」小沢慧一著、中日新聞東京本社

 南海トラフ地震が30年以内に発生する確率が70-80%とのニュースはしばしば流されているし、歴史的にも何度も発生しており、いつかまた起こることを疑う人はいないだろう。しかし、その数値がどのようにして算出されたのかはよく知らされていない。地震発生確率の計算方法には①時間予測モデル(海側のプレートの沈み込みと陸側のプレートのひずみと跳ね上がりのサイクルから導き出す手法)と②単純平均モデル(過去に起きた地震の発生間隔の平均から確率を割り出す手法)とがあり、南海トラフ地震のみが①を採用している。もし、②で計算すると20%程度となり、①と大きな乖離がある。①の方が正確なのかというと、算出基準のデータ数は少なすぎるし、それらの測定方法も信頼性が乏しいのが実態である。
 そもそも地震予知はできない。換言すると、地震との因果関係が証明された前兆現象は見つかっていないし、地震発生確率の前提となるサイクルも存在しないのかもしれない。①に基づく高い予測確率が東海域の防災を進める反面、②で算出された他の地域の低い確率が東海域以外は「安全」との誤解を招き、油断を誘発し被害を大きくしていたことは、枚挙に暇がない実例が証明している。

 お薦め度:★★★  対象:地震予知の真実を知りたい人
【西村寿雄 20250420】
●「南海トラフ地震の真実」小沢慧一著、中日新聞東京本社

 よく報道されている南海トラフ地震発生確率について著者(記者)は疑問を呈し、いろいろ事実確認をしている経過があれこれ述べられている。もともとも、「地震予知は不可能」という学者も多い。南海トラフ地震は海溝型の地震である程度周期性があり大体100年周期で起きていることは知られている。00%などはもともと信用できない。ほかに活断層型の地震もあり震災の心構えはいつも必要なので00%も一つの警告としてとらえていけばいい。

 お薦め度:★★  対象:南海トラフ地震発生確率に疑問ある人
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