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本の紹介「南極の氷に何が起きているか」

「南極の氷に何が起きているか 気候変動と氷床の科学」杉山慎著、中公新書、2021年11月、ISBN978-4-12-102672-9、860円+税


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【西本由佳 20230218】【公開用】
●「南極の氷に何が起きているか」杉山慎著、中公新書

 氷河は、夏にとけるよりも多くの雪が降る場所で成長する。だけど氷河は名前の通り流れていくから、無限にはたまらない。南極氷床に現在蓄積されている氷は2450万ギガトン、日本の年間降水量が640ギガトンだから、想像もつかない量だ。南極の氷がすべてとけると、世界中で海水面が58.3m上昇するという。温暖化の影響を受けて、南極の氷はわずかずつだが減りつつある。南極が暖かくなっているというよりも、海の熱に原因がありそうだ。氷河が流れ出して海にはり出した棚氷が本体の氷床から切り離されたり、海に面する氷崖が崩落したり。これから南極の氷がどうなるのか、予測には幅がある。それは氷床の挙動がまだよくわかっていないせいもあるが、カギを握るのは温室効果ガスがこれからどうなるかだ。温室効果ガスは人間のコントロールできる領域で、そこでの成果が求められている。

 お薦め度:★★★  対象:南極の氷がとけるなんて遠い世界のことだと思っている人に
【中条武司 20230222】
●「南極の氷に何が起きているか」杉山慎著、中公新書

 氷地球温暖化が言われるようになって着目を浴びる南極氷床。地球の淡水の7割が氷河・氷床で、さらにそれの9割が南極氷床にある。その氷河がどんどん溶けており地球の気候や海水準に影響する。ここまでは多くの本で書かれているが、氷床の溶ける・減るメカニズムやその観測の難しさ、どこまでがわかっていて、どこからがわかっていないのかが正直に書かれている。そして、多くの人(特に若い人)に南極観測に加わって欲しいんだろうなというのがひしひしと伝わってくる。

 お薦め度:★★★  対象:地球温暖化をよく知りたい人
【萩野哲 20230209】
●「南極の氷に何が起きているか」杉山慎著、中公新書

 南極氷床は巨大な氷河であり、面積1400km2(日本の37倍)、厚さ約2km、体積2700km3(日本海20杯分)で、地球に存在する氷河の約9割を占める。日本で消費される生活水なら約200万年間賄える計算となる。この氷が全て融けると海水面が58.3mも上昇するが、その挙動について、人工衛星による観測技術が進歩し、正確なデータが得られ始めたのは最近のことである。結果的には南極氷床は減少しつつある。沿岸部の氷河の流れが速くなり、その崩壊が他の部分の消失を助長しているのだ。氷河が加速した原因は棚氷が薄くなって接地線が後退し、内陸の氷を押しとどめる力が弱くなったためだ。今のところ、消失する氷は氷床全体の10万分の1/年に過ぎないが、今後このような変化が加速する可能性もある。氷床の消失は海水準や塩分・温度など海洋への影響にとどまらず、地球規模の大気循環や地殻変動にも作用する。しかし未解決問題も多く、今後については様々な予測が示されている。そして、楽観的な方に近づくか、悲観的な方に転ぶかは人間活動に依存する。

 お薦め度:★★★  対象:南極ってあまり自分たちに関係ないと思い込んでいる人
【六車恭子 20230218】
●「南極の氷に何が起きているか」杉山慎著、中公新書

 21世紀に入って南極の氷床は毎年1000ギガトンの割合で氷を失っているという。「地球最大の氷」の実像をあらゆる角度から浮き上がらせ、警鐘をならす一冊。
 南極氷床は面積1000万平方メ一トル、日本国の37倍、400個の水底湖があり、水路でつながっているという。氷と海と境界を通して互いに強く影響しあっている。一年間にふる雪は180ミリ、日本の平均降水量の十分の一。南極は砂漠並だという。晴れた日のダイヤモンドダストが重要な降水プロセスになって涵養されている。
 近年、地球規模で氷床の融解が加速して失われている。南極氷床は地球の大動脈とも言える海洋循環を通じて、気候と生態系に大きな影響力を持っている。
 南極低層水の沈み込みは海水が大気の熱を吸収し、海底に沈めてしまう効果を持っている。 南極由来の高密度水は太平洋、大西洋、インド洋、全ての大洋で海の一番深い場所を占めている海洋大循環のポンプだという。
 私たち人間の暮らしを地球の裏側で海洋大循環で、あの大陸は支えているのだ!人間の傲慢ともとれる暮らしぶりを沈黙で耐える!このシステムの存続に今こそ人類は目覚めるときである!未来の地球人へどのように引き渡せるか、試行錯誤する今を生きる時間の中にいる!この書はまさにその福音書なのかもしれません。

 お薦め度:★★★★  対象:近年多発する災害に憂えてる方
【和田岳 20230102】
●「南極の氷に何が起きているか」杉山慎著、中公新書

 21世紀に入って南極の氷床は毎年1000ギガトンの割合で氷を失っているという。「地球最大の氷」の実像をあらゆる角度から浮き上がらせ、警鐘をならす一冊。
 南極の氷床って巨大な氷河で、海に流れて行ってるとか。東南極の氷って厚さが2000mを超えるとか、西南極の基板面の多くは、海水面より低いとか、知らない事がいっぱい出てくる。そもそも東南極と西南極って、区別があったとは…。
 南極の氷床の研究者が、南極の氷床について、その研究の現状について、それが地球の気候変動とどのように関わっているかを、現在分かっている範囲で解説した一冊。南極がこんなに奥深く、まだまだ謎だらけだったとは知らなかった。
 その南極の氷床は、現在着々と減少しているが、温暖化で融けてるといった単純なものではなかった。そして、その影響も海水面が上昇するってだけではなかった。南極から地球全体を考えさせられる。

 お薦め度:★★★★  対象:温暖化で南極の氷もとけるのかなぁ、とぼんやり思ってる人
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