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本の紹介「なぜ地球だけに陸と海があるのか」

「なぜ地球だけに陸と海があるのか 地球進化の謎に迫る」巽好幸著、岩波科学ライブラリー、2012年3月、ISBN978-4-00-029591-8、1200円+税


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【中条武司 20120823】【公開用】
●「なぜ地球だけに陸と海があるのか」巽好幸著、岩波科学ライブラリー

 地球は水(=海)の惑星だとよく言われる。いやいや、陸の惑星だと著者は主張する。大陸が高いから海があり、その大陸は海で作られるというニワトリ-卵の議論が行われる。どっちにしても解説なしに専門用語がバンバン出る出る。普通の人にソレアイトやカルクアルカリなんて言葉出しても何のことやら(私もよう説明しない)。著者が自分たちが発見した最新の学説を紹介したい気持ちは文面からひしひしと伝わってくるけど、これじゃあ誰もついてこないよ。

 お薦め度:★★  対象:岩石学の授業を習ったばかりの地質系の大学生

【西村寿雄 20120824】
●「なぜ地球だけに陸と海があるのか」巽好幸著、岩波科学ライブラリー

 近年は、惑星科学という領域から地球に新たな研究の目を向けている科学者も多い。著者達は「海で大陸が生まれる」という仮説を立てその論をいくつか検証している。地球のプレートが動いているのも水の惑星のおかげという。地球内部に入り込んだ水は、海洋地殻を作る玄武岩と反応して大陸地殻(ケイ酸の多い岩石)を作り出しているのだという。
 また、このような「大陸地殻」を作っているのは地球だけで、他の惑星は見あたらないというのが今の説である。他の惑星は、惑星探査機の調査でも、ほとんど玄武岩でできていることがわかっている。それは、他の惑星では水を液体で存在させられないからだという。この宇宙にあって、地球にだけ陸と海があるのは、水の働きが大きいらしい。また、プレート運動の原動力について著者は、従来の海嶺部の湧き出しよりもホットスポットあたりの湧き出しにあると論じている。本当はどうなのだろうか。「沈み込み帯はまるで「工場」のように、日夜製品である大陸地殻をつくってきたのだ。そういえば、沈み込み帯には「煙突」よろしく火山から噴煙があがっているではないか」とおもしろい例え話もあるが、全体に難しい表現が多い。タイトルにあるような「地球進化の謎」になかなかせまりきれない。

 お薦め度:★★  対象:地球科学を学ぶ学生以上

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