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本の紹介「なぜヒトは旅をするのか」
「なぜヒトは旅をするのか 人類だけにそなわった冒険心」榎本知郎著、化学同人、2011年1月、ISBN978-4-7598-1337-1、1500円+税
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【加納康嗣 20111222】
●「なぜヒトは旅をするのか」榎本知郎著、化学同人
ヒトは自らが所属する集団(うちの集団)を離れて、見ず知らずの集団(よその集団)の生活圏に入り、再び自らの生活圏に戻る旅をする。サル類や類人猿の閉鎖的な社会集団に比べて、ヒト集団は開放的であり、他集団のヒトにも許容をもって接し、それがヒトの旅を許す要因になっている。サル学や文化人類学、民族学の知見をもとに、ヒトはなぜ旅をするのかを考察している。
ヒト集団は遺伝子的バラつきが少なく、他集団のヒトを許容することは包括適応度を上昇させることになる。旅によって世界の情報を得ることはこれも適応度の上昇につながり、遺伝子の論理に後押しされ旅する心が固定化されたと結論している。単純明快である。理屈はともあれ、家族やセックスの話とともに、利己的遺伝子の論理にはわが感情や倫理観がまだまだついていけない感じである。
お薦め度:★★ 対象:利己的遺伝子が好きな人
【中条武司 20111221】
●「なぜヒトは旅をするのか」榎本知郎著、化学同人
職場でデスクワークをしていると、旅にふらふらとでたくなる。残念ながらぱっと2週間ほど放浪、ということをするだけの暇はないのだけど、そんなんしてた大学時代はよかったよなあ。というわけで旅である。著者によると旅をするのはヒトだけだそうだ。「移動」と「旅」は全く異なるもので、「許容」という他者を中立的な立場とする概念があるヒトならではのものらしい。いろいろ説明はしているが、結論としては、ヒトにはすべからく「知識欲」や「探求心」があって、それがあるから「許容」できるのだと。延々一冊読んできて、なんかしっくりくるようなこないような結論なのだけど、まあ仕事を休んで旅をする言い訳にはなるかな。
お薦め度:★★ 対象:旅をする言い訳がほしい人
【和田岳 20111223】
●「なぜヒトは旅をするのか」榎本知郎著、化学同人
ヒトは旅をする。ヒト以外の動物も旅をする。と思いきや、著者はヒトの旅と動物の移動は違うと主張する。そしてヒトの旅は、よその人(=旅人)を許容するという行動によって支えられているという。いろいろな例を挙げてくれるが、世界各地でヒトが旅人に供与する無償のサービスには驚かされる。果たして、どうしてこのような許容が生まれたのか。順に著者の持論が展開される。
面白い議論ではあるが、許容がヒトの旅を支えてるとしても、どうしてヒトが旅に出たくなるのかは分からなかった。それは自分で考えろってことかな?
お薦め度:★★ 対象:なぜか旅に出たくなるあなた
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